アウトプット日記

読んだ本、文献、作業療法に関する勉強会・研修会のまとめ。個人的な。

疼痛の認知行動療法研修

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「平成29年度疼痛の認知行動療法研修」受講のため,東京都小平市にある国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センターに初めて行った.敷地内はとても広く四季折々の草花や木々が植えてあった.このような環境も精神疾患の治療には適しているのではと思った.

精神・神経医療研究センターの前身は傷痍軍人武蔵療養所であり,農作業が作業療法として用いられ,食糧としても貴重な資源となっていたことがパネルで説明してあった.1940年頃のことである.

研修会の内容は,慢性疼痛の捉え方から認知行動療法を行うための基本となるコミュニケーションスキル,慢性疼痛患者への認知行動療法として,心理教育と目標設定,リラクセーション,ペーシング,認知再構成について面接のデモの動画とロールプレイを通じて学ぶことができた.

今回は疼痛の認知行動療法について基本となる研修会であったため,内容は概ねすでに知っている内容が多かった.それだけ基本が大事ということだろう.ただ,面接のデモの動画や参加者とのロールプレイを通して具体的にどのように認知行動療法を実践すればよいか,実際にどのように行っているかをディスカッションできる場としてはとても貴重な場になった.

臨床心理士精神科医ではないコメディカルである作業療法士としての自分が認知行動療法を行うことについては常に疑問を持ち続けている.何をすれば認知行動療法をやっていると言えるのか.精神科ならともかく整形外科で作業療法士認知行動療法を行うことはさらに周囲の理解を得がたいことかもしれない.ペイクリニックでは別であるが.ロールプレイのペアになった臨床心理士の先生は,以前は認知行動療法やってますって言ってたけど今はマインドフルネスを自分があまり理解できておらず,マインドフルネスとセットにした認知行動療法をまだ使えていないので,最近は認知行動療法やってますって言えなくなったと話されていた.また,質問させていただいた講師の大江悠樹先生からは,認知行動療法臨床心理士の専売特許ではなく,いろんな職種が認知行動療法という共通言語をもって患者に対応できるようになればいいと思っているとの言葉を頂いた.認知行動療法にしてもマインドフルネスにしても,一般化すればするほど専門家にとってはいろいろな葛藤が生まれる.

しかし,実践していることが認知行動療法であってもそうでなくても,目の前で起こっている現象をアセスメントし最適な方法を選び,効果を検証していく姿勢は変わらないはず.相手を自分に当てはめるのではなく,相手に合わせて柔軟に方法を選ぶことができるように,相手の特性や性質を見抜く観察力と介入方法の引き出しを増やしていきたい.

そんなことを感じた研修会でした.

来月のペインリハビリテーション学会で教育講演をされる細越寛樹先生とお話しできてよかったです.

第3回北九州ブロック研修会「認知行動療法(CBT)の基礎と臨床への応用」

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今日は第3回北九州ブロック研修会で九州大学病院の藤田先生と一緒に講師をさせていただきました。

 
第一部:「認知行動療法(CBT)の基礎と臨床への応用」
第二部:「がんのリハビリテーション〜急性期からターミナル期まで」
 
質疑応答では、HADSの点数が高い人にCBTを行っているのか、精神症状が重度の方へCBTを行う際の工夫、認知的技法と行動的技法をどのように適応するか、自分の認知をうまく捉えることの難しい高齢者や認知症の方にどのように適応するか、対象者と面接を行う際の工夫(周囲の理解)など具体的な内容の質問をいただき、参加者の方の興味の高さを実感しました。
 
自分が行っていることが認知行動療法と言えるのか、まだまだ自信は持てませんが、患者さんからは「やっぱり心のケアは大事よね」「しっかりと話を聞いてくれたので安心しました」などの声をいただけるようになってきました。
 
認知行動療法は適応の仕方によってはとても効果的だと思います。また、作業療法とも共通点が多いので作業療法士にとっては馴染みやすいと思います。ただ、患者さんに適応する前にまずは自分で試してみることが大事です。自分自身のストレスマネジメントにも役立ちます。
 
参加してくださった皆さん、ありがとうございました。
 
藤田先生ともいろいろとお話しができてよかったです。
 
今回のような機会を与えてくださった北九州リハビリテーション学院の長城先生ありがとうございました。

『鈴木敏文の「統計心理学」』

 

平成28年12月22日 読了 

 

まとめ:

・過去の経験や常識に捉われず、目の前の顧客から学ぶ

・他社が何をやっているかではなく、顧客が共感するものを提供し、顧客の絶対的満足感を目指す

・「なぜなのか」「何をすべきか」を問い続ける

・コミュニケーションは自分も情報を持ち、相手にメリットを与えることを常に考える

 

キーワード:

「完売」は「売り手の満足=客の不満足」 p56

 過去の成功体験で学んだものや既存の常識から学ぶものはある状況においては有用だが、状況が変わると通用しなくなることが多い。それどころか、過去の成功体験や常識に縛られると、新しいことに対して、「経験的に見て難しい」とか「概念的におかしい」とか何かとブレーキをかけ、害を及ぼすようになる。過去の経験や常識には、ラーニングとアンラーニングの両面があり、過去にラーニング(学習)したことは、同時にアンラーニング(学習し直し)の対象にもなる。

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第17回認知療法研修会 ワークショップ4「身体疾患の認知行動療法」

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平成28年11月23日(水) 9時〜12時

 

 主に精神疾患の患者さんを対象としている精神科医臨床心理士の先生が身体疾患の患者さんを対象にケアを行うときに、どのような点に注意してどのように対応するかを学んだ。ワークショップで挙げられていた身体疾患の例は癌と糖尿病。どちらも精神疾患ではない。しかし、癌は診断を受けてからの絶望感や抗がん剤治療の苦しみなど心理的負担も大きく、糖尿病は食生活や飲酒、運動、内服、インスリン自己注射などのセルフケア行動を主体的に継続していかなくてはならない。そのため、心理的支援が必要となる。ワークショップは以下のテーマで進んだ。第一部の身体疾患ケアにおける基本的コミュニケーションの内容について私見を加えて振り返る。

 

 第一部 身体疾患ケアにおける基本的コミュニケーション

 第二部 セルフケア行動への動機を引き出す

 第三部 身体疾患医療/チームにおける役割を考える

 

身体疾患の患者さんへの心理ケアの難しさは以下の三点にある

精神疾患ではない

・患者さんが心理支援を求めていない

・アウェイ感(臨床心理士としての)

 

 精神科のクリニックに自分から訪れる患者さんは心理支援を求めて来ている。しかし、身体疾患の患者さんはうつ病や強迫症障害などと診断されていないため、そもそも患者さん自身が心理支援を求めていない。そのような状況で臨床心理士が介入するのは当然難しい。また、身体疾患のケアを行っている多職種チームに専門外の臨床心理士が入ることはアウェイ感を招く。

 

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『できる研究者の論文生産術』

 

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

 

 まとめ:

 論文を生産的に書くには、「一気書き」を止め、スケジュールを立てて執筆時間をあらかじめ割りふり、そのスケジュールに沿って書いていく。

 

キーワード:

目標設定する p34

 目標というのは、やはり大切だ。明確な目標には、人を動かす力がある。つまり、明確な目標があれば、計画が立てられるし、個々の行動を実行できるし、目標達成時には誇らしい気持ちにもなれる(Bandura, 1997)。逆に、明確な目標がないと、行動というのは、散漫になり、方向性を欠いてしまうものだ(Lewin, 1935)。

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『マッキンゼー流入社1年目ロジカルシンキングの教科書』

 

マッキンゼー流 入社1年目ロジカルシンキングの教科書

マッキンゼー流 入社1年目ロジカルシンキングの教科書

 

 平成28年4月29日 読了

 

まとめ:

・「本物の論理思考」とは、「クリティカルに考え(深い洞察による自分の考えを持ち)、ロジカルに展開する(わかりやすく伝える)」こと

・目的はなにかを常に意識し、思考パターンの枠にとらわれず、問い続ける

・「So What?(だからなに?)Why So?(それはなぜ?)」を繰り返す

 

キーワード:

 マッキンゼー流の「本物の論理思考」とは「クリティカルに考え(深い洞察による自分の考えを持ち)、ロジカルに展開する(わかりやすく伝える)」こと p27

 思考作業の3つのステップ

Step1 前提を自分でちゃんと確認する(それは本当?)

Step2 深く根拠を調べて伝える(〜だからそうだよ)

Step3 自分だけの深い意見を持つ(それ、いいね)

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「医療安全とコミュニケーション〜医療現場に求められる患者理解と的確な伝達力」

「医療安全とコミュニケーション〜医療現場に求められる患者理解と的確な伝達力」

日時:平成28年2月25日(木)19時〜20時30分

場所:あいれふ

講師:九州大学病院心療内科 臨床心理士 藤井悠子氏

テーマ:

・医療分野におけるコミュニケーションの重要性

・リスクを軽減するためのコミュニケーションと対策

・表面化しにくいリスク

 

まとめ:

 リスクの根本原因のひとつとしてのコミュニケーションの問題がある。①医療者間の不十分なコミュニケーションと、②患者・家族と医療者間の不十分なコミュニケーションである。医療者間の不十分なコミュニケーションの背景には伝達内容の解釈の間違い、権威的な相手に対する疑問や意見が言えない(権威勾配)、知識や情報が少ないために疑問や意見が言えない(情報格差)があり、コミュニケーションのギャップを埋めることが必要。患者や家族とのコミュニケーションでは患者や家族の背景に埋もれている心理的特性を読み取り、相手の理解度を評価して理解度に合わせた的確な表現を用いることが必要になる。表面化しにくいリスクに対して、意見の言いやすい職場風土の構築や患者や家族の不満・不安をいち早く察知できるようなスキルの獲得が求められる。

 

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