『自分の仕事をつくる』
- 作者: 西村佳哲
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2003/10/01
- メディア: 単行本
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平成25年8月25日 読了 52分
まとめ:
仕事を「自分の仕事」にするポイントは、仕事に自分を合わせるのではなく、自分の方に仕事を合わせる力にある。
目次:
まえがき
1 働き方がちがうから結果もちがう
八木保サンフランシスコに訪ねる
象設計集団を北海道・帯広に訪ねる
柳宗理さんを東京・四谷に訪ねる
IDEOのデニス・ボイルさんをパロアルトに訪ねる
パタゴニア社をベンチュラに訪ねる
ドラフトの宮田識さんを東京・恵比寿に訪ねる
小林弘人さんを東京・お茶の水に訪ねる
2 他人事の仕事と「自分の仕事」
植田義則さんのサーフボードづくりを訪ねる
甲田幹夫さんのパンづくりを訪ねる
ヨーガン・レールさんのモノづくりを訪ねる
馬場浩史さんの場づくりを訪ねる
ファインモールド社のプラモデルづくりを訪ねる
3 「ワーク・デザイン」の発見
あとがき
キーワード:
デザインに限らず、多くの仕事の現場で効率性が求められている。しかし、なんのために?大半は経済性の追求にあって、仕事の質を上げるための手段ではない。もちろん速度や勢い、リズムは、いい仕事には欠かせない要素だ。しかし、経済価値と、その仕事の質的価値では、ベクトルの向きが最初から異なっている。
合理的であること、生産的であること、無駄がなく効率的に行われることを良しとする価値観の先にあるのは、極端に言えばすべてのデザインがファーストフード化した、グローバリズム的世界だ。そのゲームから降りて、仕事の中に充実感を求める時、私たちには「時間」を手元に取り戻す工夫が求められる。 p49
どのような分野にも、技術進化の過程で起こる倒錯現象がある。目的と手段が入れ替わってしまう現象だ。一種のオタク化と言ってもよいかもしれない。写真を撮るべく機材を揃えるうりに、機材を集める行為そのものが目的性を持ち始めてしまうこと。生活を支えることが目的であるにもかかわらず、建築物としての美しさや、建築誌での扱われ方に気を取られてしまう建築家。
目的と手段の倒錯は、あらゆる仕事で起こりうる。
もちろん個人の趣味や趣向は責められるべきものでもない。ロックミュージシャンのギターコレクションはしかるべきものだし、ピアニストなら、音楽だけでなくピアノという道具そのものにも深く向き合わなければならない。しかしそれが過ぎると、あらゆる仕事の最終的な目標であるべき「人」が、疎外されてしまう。
優れた技術者は、技術そのものでなく、その先にかならず人間あるいは世界の有り様を見据えている。
デザインに限らず、経済のための経済、医療のための医療、消費のための消費など、目的と手段のバランスを失わない唯一の手段は、私たち一人一人が、自分の仕事の目的はそもそもなんだったのかを、日々自問することにある。 p71
大切なのは、本当の問題を発見していく能力です。表面的に目につく問題点は、より根本的な問題が引き起こしている現象のひとつにすぎないことが多い。では、問題に深くアプローチしていく方法とはなんでしょうか。それは、机の上の頭を捻って問題を予測することではない。早い段階から、可能な限り具体的にテストし、トライ&エラーを重ねていくこと。これに尽きます。 p80
自分が感じた、言葉にできない魅力や違和感について「これはいったい何だろう?」と掘り下げる。きっかけはあくまで、個人的な気づきに過ぎない。
だが、そこを掘って掘って掘って、掘り下げてゆくと、深いところでほかの多くの人々の無意識と繋がる層に達する。こうしたモノづくりのプロセスが、「だんご三兄弟」のような国民的ヒット作を生み出している。 p147
自然や波の音、朝目を覚ます森の鳥たち、あるいは春に咲く花。そうした自然物に、人が癒される思いを抱きやすいのは、美しいからだけではない。それらには、「嘘」やごまかしが一切含まれていないのだ。ペットの存在も同様である。
思いっきり単純化すると、「いい仕事」とは嘘のない仕事を指すのかもしれない。 p173
ファインモールドの鈴木氏にしても、森本氏にしても、彼らの仕事が持つ魅力の源泉は、働く中でつくり手本人が感じている喜びや快感にある。またその仕事の感覚は「いつか」ではなく、いまこの瞬間に向けられている。彼らは仕事において「今この瞬間の自分」を疎外しない。自分がほかでもない自分であることで、その仕事が価値を持つことをよく知っている。
このように行われる仕事は快楽として、本人だけでなく、他人をも疎外しないように思う。 p221
それでも、どんな状況下でも、自分の働き方は自分でデザイン出来る。「今日、どう働くか」は、自分で選択できるからだ。
仕事を「自分の仕事」にするポイントは、仕事に自分を合わせるのではなく、自分の方に仕事を合わせる力にある。
自分の仕事に対するオーナーシップを、常に自分自身が持っていること。その仕事を通じて、学びを拓きつづけていくこと。 p259
アクションプラン:
自分の働き方は自分でデザインする