『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』
- 作者: 安宅和人
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2010/11/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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平成25年9月10日 読了 58分
まとめ:
解決しなければならない問題の本質、「イシュー」を見極める。
「何に答え出すべきなのか」についてブレることなく活動に取り組むことがカギ。
悩まない、悩んでいるヒマがあれば考える。
目次:
はじめに すぐれた知的生産に共通すること
序章 この本の考え方―脱「犬の道」
第1章 イシュードリブン―「解く」前に「見極める」
第2章 仮説ドリブン①―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
第3章 仮説ドリブン②―ストーリーを絵コンテにする
第4章 アウトプットドリブン―実際の分析を進める
第5章 メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる
おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう
キーワード:
常識を捨てる p21
・「問題を解く」より「問題を見極める」
・「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」
・「知れば知るほど知恵が湧く」より「知り過ぎるとバカになる」
・「1つひとつを速くやる」より「やることを削る」
・「数字のケタ数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」
「バリューのある仕事とは何か」 p25
ひとつめが「イシュー度」であり、2つめが「解の質」
issueの定義 p25
A)a matter that is dispute between two or more parties
2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
B)a vital or unsettled matter
根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
本当に右上の領域に近づこうとするなら、採るべきアプローチは極めて明快だ。まずはヨコ軸の「イシュー度」を上げ、そののちにタテ軸の「解の質」を上げていく。まず、徹底してビジネス・研究活動の対象を意味のあること、つまりは「イシュー度」の高い問題に絞る。 p30
脳は脳自身が「意味がある」と思うことしか認知できない。そしてその「意味がある」と思うかどうかは、「そのようなことが意味をもつ場面にどのくらい遭遇してきたか」によって決まる。 p40
現在わかっていること、最近の発見とその意味合いなど、対峙する問題を深いコンテキスト(文脈)に沿って理解できるか、それが最初の勝負どころとなる。 p41
言葉で表現するときのポイント p53
イシューと仮説を言葉で表現するときの注意点を挙げておきたい。
・「主語」と「動詞」を入れる
主語と動詞を入れた文章にするとあいまいさが消え、仮説の精度がぐっと高まる。
・「WHY」より「WHERE」「WHAT」「HOW」
「WHY=~はなぜか?」という表現には仮説がなく、何について白黒をはっきりさせようとしているのかが明確になっていない。「答えを出す」という視点で課題を整理すると、「WHERE」「WHAT」「HOW」のかたちになることが多いことは理解してもらえるだろう。
・比較表現を入れる
「AかBか」という見極めが必要なイシューであれば、「~はB」というより「Aでなくて、むしろB」という表現にする。
よいイシューの3条件 p55
1.本質的な選択肢である
2.深い仮説がある
3.答えを出せる
どれほどカギとなる問いであっても、「答えを出せないもの」はよいイシューとは言えないのだ。「答えを出せる範囲でもっともインパクトのある問い」こそが意味のあるイシューとなる。そのままでは答えの出しようがなくても、分解することで答えを出せる部分が出てくればそこをイシューとして切り出す。 p72
気になる問題が100あったとしても、「今、本当に答えを出すべき問題」は2、3しかない。さらに、そのなかで「今の段階で答えを出す手段がある問題」はさらにその半数程度だ。つまり、「今、本当に答えを出すべき問題であり、かつ答えを出せる問題=イシュー」は、僕らが問題だと思う対象全体の1%ほどに過ぎない。 p73
定量分析の3つの型 p152
1 比較
2 構成
3 変化
どれほど目新しい分析表現といえども、実際にはこの3つの表現のバラエティ、および組み合わせに過ぎない。
意味合いを表現する p164
分析の本質は比較だと述べた。したがって、分析、または分析的な思考における「意味合い」は、「比べた結果、違いがあるがどうか」に尽きる。つまり「比較による結果の違い」が明確に表現できていることが「意味合い」を表現するポイントになる。明確に理解し得る違いとして、典型的なのは次の3つだ。
1 差がある
2 変化がある
3 パターンがある
知覚の特徴から見た分析の本質 p171
1 閾値を超えない入力は意味を生まない
脳神経系の基本単位である単一のニューロンでは、ある一定レベルの入力がないと情報を長距離にわたって伝達する活動電位というものが発生しない。これを「全か無の法則」というが、神経系は群であろうと脳のレベルになろうと、基本的に同じ特性をもっている。
2 不連続な差しか認知できない
脳は「なだらかな違い」を認識することができず、何らかの「異質、あるいは不連続な差分」だけを認識する。
脳は「異質な差分」を強調して情報処理するように進化してきており、これな脳における知覚を考える際の根源的な原理のひとつだ。そしてこれが、分析の設計において明確な対比が必要な理由でもある。明確な対比で差分を明確にすればするほど脳の認知度合いは高まる。そう、分析の本質が比較というよりは、実は私たちの脳にとって認知を高める方法が比較なのだ。そして、私たちはこれを「分析的な思考」と呼んでいる。
3 理解するとは情報をつなぐこと
脳神経系では「2つ以上の意味が重なりつながったとき」と「理解したとき」は本質的に区別できないのだ。これが第3の特徴、すなわち「理解するとは情報をつなぐこと」という意味だ。
既知の情報とつなぎようのない情報を提供しても、相手は理解のしようがないのだ。そしてこれが、私たちが分析の設計において、「軸」を重視しなければならない理由でもある。
同じ基準から異なるものを見ることによって、情報と情報の「つなぎ」が発生しやすくなり、理解が進む。優れた軸は複数の異なる情報をつなぐ力が強いのだ。
4 情報をつなぎ続けることが記憶に変わる
マイクロレベルの神経間のつなぎ、すなわちシナプスに由来する特性として「つなぎを何度も使うとつながりが強くなる」ことが知られている。これはヘッブという人が提唱したことから「ヘッブ則」と呼ばれているが、何度も情報のつながりを想起せざるを得ない「なるほど!」という場面を繰り返し経験していると、その情報を忘れなくなる。当たり前のように思えるが、これは日常ではあまり意識されていない。
回転数とスピードを重視する p197
停滞を引き起こす要因として、最初に挙げられるのが「丁寧にやり過ぎる」ことだ。僕の経験では、「60%の完成度の分析を70%にする」ためにはそれまでの倍の時間がかかる。80%にするためのにはさらに倍の時間がかかる。一方で、60%の完成度の状態で再度はじめから見直し、もう一度検証のサイクルを回すことで、「80%の完成度にする半分の時間」で「80%を超える完成度」に到達する。単に丁寧にやっていると、スピードだけでなく完成度まで落ちてしまうのだ。
検討報告の最終的なアウトプットは、ビジネスではプレゼンテーション、研究では論文というかたちをとることが多いだろう。これらは第一に聞き手・読み手と自分の知識ギャップを埋めるためにある。聞き終わったとき、あるいは読み終わったときに、受け手が語り手と同じように問題意識をもち、同じように納得し、同じように興奮してくれているのが理想だ。このためには受け手に次のようになってもらう必要があるだろう。
1 意味のある課題を扱っていることを理解してもらう
2 最終的なメッセージを理解してもらう
3 メッセージに納得して、行動に移してもらう
「デルブリュックの教え」 p205
ひとつ、聞き手は完全に無知だと思え
ひとつ、聞き手は高度の知性をもつと想定せよ
どんな話をする際も、受けては専門知識はもっていないが、基本的な考えや前提、あるいはイシューの共有からはじめ、最終的な結論とその意味するところを伝える、つまりは「的確な伝え方」をすれば必ず理解してくれる存在として信頼する。「賢いが無知」というのが基本とする受け手の想定だ。
優れたチャートと磨き込みのコツ p216
チャート(図表・グラフ)は「メッセージ・タイトル・サポート」という3つの要素からできている。いちばん下には必ず情報源を書く。
1 イシューに沿ったメッセージがある
2 (サポート部分の)タテとヨコの広がりに意味がある
3 サポートがメッセージを支えている
「何らかの問題を本当に解決しなければならない」という局面で、論理だけでなく、それまでの背景や状況も踏まえ、「見極めるべきは何か」「ケリをつけるべきは何か」を自分の目と耳と頭を頼りにして、自力で、あるいはチームで見つけていく。この経験を1つひとつ繰り返し、身につけていく以外の方法はないのだ。 p239
アクションプラン:
イシューからはじめる
悩まない