「運動器リハビリテーションにおける作業療法士の役割」
平成26年2月16日
第18回福岡県作業療法学会 http://fukuoka-ot.com/
口述発表演題 口述4 その他1
〜COPMを用いた遂行度と満足度の調査〜
福岡県作業療法学会にて演題発表を行いました。
発表内容を掲載します。
よろしければご意見ください。
運動器疾患の入院患者に対して、COPMをつかった評価と介入を行いました。
OT介入前後のCOPMの遂行度と満足度の変化と、COPMをつかうことのメリットについて発表します。
運動器の作業療法について、どんなイメージをお持ちですか?
関節可動域訓練、筋力訓練、ADL訓練、家屋調査、家屋改修などでしょうか。
術後の患者さんの場合、手術による痛みや不安を伴います。
そのため、入院中に退院後の生活をイメージすることが難しく、意欲が低下する患者さんも多く経験します。
患者さんの生活背景はさまざまです。
そのため、入院中から退院後の生活に焦点を当てた関わりが必要です。
今回、運動器疾患の入院患者に対して、COPMを使った目標設定と介入を行いました。
その中で、疾患ごとのニードの特徴がみえました。
また、ニードに合わせた介入を行った結果、遂行度と満足度に変化がみられたので報告します。
まず、運動器疾患患者に対してCOPMをつかってあがったニードを海外の文献からみてみます。
TKAではセルフケアである階段昇降と歩行がほとんどでした。
大腿骨骨折でもセルフケアが7割を占めています。
なお、国内では、運動器疾患患者に対してCOPMをつかって評価をした研究はありませんでした。
今回の研究の対象は、当院に入院した運動器疾患患者37名です。
対象疾患は、TKA、THA、大腿骨頸部骨折、ARCR、圧迫骨折や脊柱管狭窄症などの腰部疾患です。
平均年齢は66.6歳でした。
方法は、作業療法初回介入時に面接を行い、COPMを用いて目標設定を行いました。
当院の場合、多くは術前からPTが介入し、術後、歩行器歩行や杖歩行など、ある程度移動能力が向上してからOTが介入します。
ARCRの場合は、外転装具が外れる術後4週ぐらいからCRPSの予防を目的にOTが介入します。
COPMで挙げられたニードに基づいてプログラムを立案し、介入を行いました。
介入後、退院時に再評価を行いました。
結果です。
海外の文献の結果と同じように、セルフケアが6割以上を占めていました。
疾患ごとのニードを見ていきます。
TKAでは、歩行に対するニードが多く、また、女性が多かったため、農業や家事へのニードも多い結果となりました。
THAでは、靴下の着脱や入浴、爪切りなどのセルフケアがほとんどでした。
大腿骨頸部骨折では、歩行や家事へのニードが多い結果となりました。
ARCRでは、更衣や洗体、自動車の運転など、上肢を使用する作業へのニードが多い結果となりました。
腰部疾患では、トイレや入浴、歩行などへのニードが多い結果となりました。
介入時と退院時の遂行度と満足度の変化です。
遂行度は3.1±1.8から7.3±2.1へ、満足度は3.2±2.0から7.5±2.2へと向上し、有意差を認めました。
COPMのメリットは3点あります。
1つめは、患者さん自身が目的意識を持つことができる点です。
患者さんが自分自身を振り返り、自己評価を行うことで、退院後にどのような生活をしたいのか、そのためには入院中に何が必要なのかを考えることができます。
2つめは、患者さん自身にとって本当に大切な作業に対して介入することができる点です。
面接を通して入院前の生活背景や習慣、興味などを共通理解することで、単なるニードではなく、その人らしい生活を再獲得するための作業に介入することができます。
3つめは、作業遂行の質を評価することができる点です。
その作業ができるかできないかだけを評価するのではなく、どの程度できるのか、作業遂行の質を自分の尺度で評価することができます。
まとめです。
運動器疾患患者に対する作業療法では、入院中にできるだけ退院後の生活をイメージした関わりをすることが大切です。
面接でCOPMを使用した目標設定を行い、ニードに基づいて介入することで、術後の不安軽減にもつながると考えます。
COPMは運動器リハビリテーションにおいても作業療法の効果を示す有益な指標となると考えます。