アウトプット日記

読んだ本、文献、作業療法に関する勉強会・研修会のまとめ。個人的な。

『デザイン思考が世界を変える』

 

デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)

デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)

 

 平成26年2月24日 読了

 

まとめ:

イノベーションは、「着想」「発案」「実現」。

デザイナーの仕事は、「ニーズを需要に変えること」。人間を最優先にすることを学ぶ必要がある。

 デザイン思考とは、インテグレーティブ・シンキング(統合思考)を行う能力。

 

 

目次:

はじめに ーデザイン思考のパワー

パート1 デザイン思考とは何か?

第1章 デザイン思考を知る

第2章 ニーズを需要に変える

第3章 メンタル・マトリクス

第4章 作って考える

第5章 初心にかえる

第6章 メッセージを広げる

パート2 これからどこへ向かうのか

第7章 デザイン思考が企業に出会うとき

第8章 新しい社会契約

第9章 デザイン・アクティヴィズム

第10章 いま、未来をデザインする

 

キーワード:

 イノベーションは、三つの空間に分けて考えることができる。「着想(インスピレーション)」は、ソリューションを探り出すきっかけになる問題や機会。「発案(アイディエーション)」は、アイデアを創造、構築、検証するプロセス。そして、「実現(インプレメンテーション)」は、アイデアをプロジェクト・ルームから市場へと導く行程だ。チームがアイデアを改良したり、新たな方向性を模索したりするうち、プロジェクトがこの三つの空間を何度も行き来することもある。

 このプロセスが反復的で非直線的なのは、デザイン思考家が無秩序で支離滅裂だからではない。基本的に、デザイン思考は探求のプロセスだ。うまくいけば、途中で必ず予期せぬ発見があるはずだ。そして、その発見の意味を汲み取ることが重要だ。

p26

 

 私が言いたいのは、デザイン思考はテーブルの両側にいる人々が実践すべき原理だということだ。つまり、デザイン・チームはもちろんのこと、クライアントの参加も欠かせない。

p37

 

 クリエイティブな組織は、能力はもちろん、分野を超えて共同作業する資質をも兼ね備えた人材を常に探している。これこそが、単なる「複数分野(マルチディシプリナリー)」のチームと、「異分野連携(インターディシプリナリー)」のチームの違いなのだ。単なる複数分野のチームでは、各個人が自分の専門分野の擁護者になるため、それぞれの間での折衝が長引き、中途半端な妥協に落ち着くことが多い。しかし、異分野連携のチームでは、アイデアが全員で共有され、それぞれがその責任を担うのだ。

p40

 

 私は、デザインを組織のDNAに組み込むよう企業に訴え続けているが、デザイナーにもデザイン手法そのものを変革し続けるよう訴えたい。われわれの目まぐるしい世界には、芸術家、職人、個々の発明者の居場所はなくならないだろう。しかし、あらゆる業界で、新たなデザイン手法を求める地殻変動が起こりつつある。コラボレーティブで、個人の創造性を抑制するのではなく増幅させる手法。焦点が明確であると同時に、柔軟で、予期せぬ状況にすばやく対応できる手法。製品の社会的、技術的、商業的な要素を最適化するだけではなく、その適切なバランスを取る手法。次世代のデザイナーは、スタジオや工房の中だけでなく、重役会議でも力を発揮できなければならない。そして、成人の非識字率から温暖化まで、あらゆる問題をデザインの問題としてとらえる習慣を身に付ける必要があるのだ。

p53

 

 デザイナーの仕事は、ピーター・ドラッカーの見事な表現を借りれば、「ニーズを需要に変える」ことだ。一見すると、簡単に聞こえる。人々の望むものを探り出し、与えればよい。しかし、そんなに簡単なら、iPodプリウス、MTV、イーベイのような成功例がなぜもっと転がっていないのだろう。その答えは、人間を物語の中心に据えていないからだ。人間を最優先にすることを学ぶ必要があるのだ。

p54

 

 共感こそ、学問的な思考とデザイン思考を隔てる大きな違いだろう。私たちの目的は、新しい知識を生み出したり、理論を検証したり、科学的仮説を実証したりすることではない。確かにこれらは私たちの共有する知的風景には欠かせない一部だが、それは大学の同僚たちのする仕事だ。デザイン思考の役割とは、観察から洞察を、そして洞察から生活に役立つ製品やサービスを生み出すことなのだ。

p66

 

 つまるところ、デザイン思考とは、インテグレーティブ・シンキング(統合思考)を行う能力なのだ。

 50回以上もの詳細なインタビューに基づいて書かれた著書『インテグレーティブ・シンキング』で、マーティンは「相反する考えを対比させて新しい解決策を導く思考ができる人は、一つの考えしか追えない人よりも、困難な問題に取り組むときに優位に立てる」と述べている。インテグレーティブ・シンキングができる人々は、問題にとって重要なポイントの範囲を広げる方法を知っている。「AかBか」を嫌い、「AもBも」を重視する。非直線的な関係や多方向の関係を矛盾ではなくインスピレーションの源泉とみるのだ。

p112

  

 デザインには、イメージ、形、質感、色、音、匂いを通じて私たちの感情を惹き付け、生活を豊かにするパワーがある。しかし、「デザイン思考」が持ち合わせている人間中心の性質は、次なるステップを指し示している。人々への理解や共感を利用すれば、積極的なかかわりや参加の機会を生み出す経験をデザインすることができるのだ。

p151

 

 旧態依然とした文化をイノベーション指向でデザイン主導の文化に転換させるには、行動、決断、意志が必要だ。ワークショップは、人々をデザイン思考という新しいアプローチにふれさせるのに役立つ。パイロット・プロジェクトは、組織内でデザイン思考の利点を売り込むのに役立つ。経営陣は、転換のプログラムに力を注ぎ、人々に学習と実験の機会を与える役割を果たす。異分野連携のチームは、広範囲にわたる活動を実現する。

p221

 

 デザイン思考は、少なくとも次の三つの重要な分野で、現代に求められている大規模な変革(カナダ人デザイナーのブルース・マウのいう「マッシブ・チェンジ」)を促進できる。ひとつ目は、何が危機に瀕しているかを人々に理解させ、私たちの下す選択の真の代償を明確にすること。ふたつ目は、新しい物事を生み出すときに用いるシステムやプロセスを根本的に再評価すること。そして、三つ目は、人々を持続可能な行動に向かって歩ませる方法を見つけることだ。

p245

 

アクションプラン:

「How might we?」で考える