アウトプット日記

読んだ本、文献、作業療法に関する勉強会・研修会のまとめ。個人的な。

『ホンモノの思考力』

 

ホンモノの思考力―口ぐせで鍛える論理の技術 (集英社新書)

ホンモノの思考力―口ぐせで鍛える論理の技術 (集英社新書)

 

 平成27年1月7日 読了

 

まとめ:

 小論文やディベートは自分の意見を明確にするものである。

 小論文やディベートで論理的思考を繰り返す。

 自分の主張を裏付けるために、知識を増やそうとする。

 そうするうちに、読解力もついてくる。

 関心も、自ら学ぼうとする意欲も生まれてくる。

 一つの答えではなく、様々な考え方、様々な答えがあることを知ることができる。

 こうして、論理力ばかりか洞察力、つまりは総合力がついてくる。

 これこそが「ホンモノの思考力」である。(「結びにかえて」より)

 

キーワード:

二項対立こそ、論理の原型である p20

 言うまでもなく、論理的で科学的思考の基本は、主体と客体、すなわち観察する自分と対象とを明確に分けることだ。そうすることによって、人間は対象を自分から引き離して客観的に観察できるようになった。

 しかも、対象がある要素をもっているかもっていないかという二項対立を明確にすることによって、物事と物事の差異をきちんと認識するようになった。

 つまり、二項対立によって人間は意味の網目を手に入れたわけだ。こうして、現象を分析し、ある命題が真であるか偽であるかという判断もできるようになり、それを好ましいとみなすか否か、という意見をもつこともできるようになった。

 そもそも、物事を二つにきっぱりと分けて考えることによて、分析ができる。ある要素が存在するかしないか、真であるか偽であるか、好ましいか好ましくないかを明確にすることによって、現象を分析できる。

 そればかりではない。顕在・潜在、イエス・ノーを対置することによって、物事を一方的に見ないようになる。ある見方があれば、別の見方がある、賛成意見があれば、反対意見がある、あることを好む人間がいれば、好まない人間もいるということが明確になる。そして、ある意見を考えると、別の意見を前提とし、それを考慮するようになる。

 こうして、様々な二項対立によって、人間は分析し、厳密に思考し、自分の意見をもてるようになり、また多様な意見を考えるようになったのだ。

 しかも、二項対立を思考の原型にすることによって、自他の区別も明確になる。言い換えれば、自分は自分、他人は他人という個人主義的な意識が強まる。日本人のように、自他の区別を曖昧にして、他人を思いやったり、他人の世界に入り込んだりしない。一つの考え方だけでなく、別の考え方がある、別の価値観があるという認識をもてるようになる。

 

 

型思考の意味 p25

 型思考もまた、知的であるために大きな意味をもっている。

 気分によって、考えるべきことを考えなかったり、余計なことを考えたりするのではなく、きちんと手順を守り、遺漏なく考えるべきことを考え、妥当な結論を導き出すのが、論理的に思考するということだ。そのためには、「型」が有効だ。「型」という手順に沿って考えることによって、論理を守ることができる。

 しかも、その形式を守って思考すれば、論理的に思考することができるだけでなく、自分らしく考えることができる。もっとはっきり言えば、「型」を守ってさえいれば、かなり個性的なことを考えても、客観性を保てるということだ。

 そもそも、能力のあるものが個性を発揮するのは、ある程度「型」を押しつけられて、それに反発するときではないだろうか。初めから自由にされたのでは、何も身につかない。アカデミックな考え方を知り、それを身につける。だが、だんだんとその形式では窮屈になってくる。そうして、新しい「型」、新しい個性が生まれる。「型」を押しつけられてつぶれるような個性であれば、そんな個性はすぐにつぶされていくだろう。アカデミズムという壁にぶち当たり、それを乗り越えてこそ、強い個性が生まれてくる。

 

背伸び思考 p27

 思考するというのは、言い換えれば、自己主張するということだ。ほかの人と違う考え方をもち、別の考えをもつ人を言い負かそうとする。そのために、論理的に思考する。自分はほかの人よりも優れている、ほかの人よりも知的だということを見せようとする。ほかの人よりも優れた自分を売り込もうとする。だから、知的になる。

 知的であることを人前で見せて目立とうとし、知性を評価されるように振舞ってこそ、本当に知的になる。それなしには、知性をもてるようにならないのではなかろうか。

 

問題発見能力とは、ノーと言うこと p45

 あらゆることにノーがある。イエスに決まっているということはない。顕在があれば、潜在がある。イエスがあれば、ノーがある。ある出来事が起こっているとしたら、まだ起こっていない反対の出来事があるはずだ。ある意見があるとすれば、それに反対の意見があるはずだ。そう考えることによって、現在の出来事を絶対視しないですむ。

 ノーという視点が生まれないと、停滞する。現状にノーを突きつけることによって、新しい展望が見えてくる。もっと言えば、ノーという言葉によって、発展する。

 物事にノーを突きつけて、「現状はおかしい。改めるべきではないか」というイエス・ノーの二項対立の形にすることが、問題発見能力と言っていいだろう。

 

背後にある二項対立を探れ p69

 ある行動をとるということは、二項対立のどちらかを選択するということなのだ。したがって、何かが起こったとき、そこにはどのような二項対立が存在するかを考える必要がある。その行動、その現象は、二項対立のどちらに側に位置するのか、あることが起こったということは、何が起こらなかったということなのか、そのようなことを考えてみるわけだ。

 もちろん、実際の社会においては、ことはそれほど単純なわけではない。実際の出来事は複合的に起こる。一つの二項対立で捉えきれないことがある。二項対立のどちらにも当てはまらないような行動もあれば、複数の二項対立とかかわることもある。

 しかし、たとえそうであったとしても、二項対立を見抜き、それぞれの問題についてものさしを用意することによって、物事を分析できることは間違いない。少なくとも、分析するための糸口をつかめるだろう。そして、そうした分析を続けることによって、現象にどのような意味があるのか。だんだんと理解できるようになってくるのだ。

 

「メモの型」と使って考えをまとめる p77

 「メモの型」を用いる場合、私は3WHAT3W1Hを考えることを勧める。

 3WHATとは、「それは何か(定義)」、「何が起こっているのか(現象)」、「何がその結果起こるか(結果)」だ。これらの三つのWHATを考えることで、問題点を整理するわけだ。

 3Wとは、WHY「なぜそれが起こっているのか。それがなぜ好ましくないか、あるいは好ましいか(理由・根拠)」、WHEN「いつからそうなのか、それ以前はどうだったか(歴史的状況)」、WHERE「どこでそうなのか、ほかの場所ではどうなのか(地理的状況)」。そして最後のHとは、HOW「どうやればいいか(対策)」。

 何かが会議や雑談で問題になっているとき、メモをとるようにして、これらの項目を口に出してみる。言い換えれば、一つの「型」として頭に入れておいて、決まり文句として用いるのだ。考えるときには、常に「定義・現象・結果・理由(根拠)・歴史的状況・地理的状況・対策」という手順に沿って考えてみる。考えながら、周囲の人と話し、それをヒントにして、自分の考えをまとめる。そうすることで、現状を分析できる。自分の考えもまとめられる。

 

「論述の型」を使って意見を述べる p88

第一部 主張表明

 「私はーと考える」というように、問題となっていることについてイエスかノーかの主張をはっきり言う。ただし、もし自分の主張を初めにはっきり言うのがはばかられる場合には、「どちらが正しいだろうかねえ」というように、ここでは問題提起をするにとどめてもよい。

第二部 意見提示

 「確かにーしかしー」のパターンで言う。「確かに」のあとで、反対意見を考慮しながら、「しかし」で切り返して自分の意見を明確にする。イエスとノーのどちらの立場を取るかの方向を定め、問題となっている事柄の現在の状況を正しく把握する。

第三部 根拠

 「なぜなら」で始めて、自分の意見の根拠を示す。場合によっては、そのあと、それを実現するための具体的対策を示すこともある。

第四部 結論

 「このようなわけで」で始めて、自分の意見を確認する。

 

目次:

 第1章 二項対立思考と型思考と背伸び思考
 第2章 二項対立で考えを練る
 第3章 「型」を用いて知的に話す
 第4章 「型」を用いて他者の意見を知的に理解する
 第5章 「型」を用いて知的に反論する
 第6章 背伸びをして知識を自分のものにする

 

アクションプラン:

二項対立で考える