アウトプット日記

読んだ本、文献、作業療法に関する勉強会・研修会のまとめ。個人的な。

『職場は感情で変わる』

 

職場は感情で変わる (講談社現代新書)

職場は感情で変わる (講談社現代新書)

 

 平成27年1月11日 読了

 

まとめ:

  組織は、そこに関わる人たちを幸せにする一つのツールでしかありません。しかし、組織は時に人の活力を奪い、人の心や身体の健康すら奪ってしまう。だからこそ、そうならないために、そこに関わる人たちが自分たちの手で組織をマネジメントする必要があるのです。(「はじめに」より)

 

キーワード:

あなたの職場、元気ですか? p14

 ・みんな、元気がなくて、暗い感じがする

 ・お互いにイライラして、ピリピリとした感じがする

 ・みんなが保守的になっていて、殻に閉じこもっている感じがする

 ・職場全体に活力があり、イキイキとしていて、前向きな感じがする

 ・お互いに優しくて、あたたかい感じがする

 こんな風に、職場全体が何か一つの感情を共有しているように感じたこと、ありませんか?

 もちろん、組織は人間ではないし、生物学的な意味での感情を持っているわけではありません。でも、何か組織全体が一人の人間のように元気になったり、逆に落ち込んだりしてしまう。こんな風に感じたことありませんか?

 もとをたどれば、一人ひとりの感情です。でもそれが広まり、その組織のメンバーに共通の感覚を与えてしまうもの。これが「組織感情」です。

 特に、職場という身近で閉鎖性の高い組織では、お互いの感情が伝わりやすく、気づくとみんなが同じような感情を持ってしまう。こういったことが起こりやすくなります。

 

 

組織感情は一人ひとりの意識と行動に影響する p15

 なぜ、職場の空気や雰囲気をつくり出している「組織感情」に注目することが必要なのでしょうか。それは、組織感情があなたの意識や行動に大きな影響を与えるからです。

 

良い職場とは、どういう職場? p38

 良い職場、良いチームとは、「人々を幸せにする価値を生み出し続けられる組織」だと定義できます。

 だとすると、良い職場、良いチームであるためには、何が必要なのでしょうか。大きく分けて三つの要素が必要です。

 第一の要素は、一人ひとりがイキイキと前向きな感情を持って、職場やチームに参加できているかどうかです。いくら組織全体の一体感があり、強い組織でも参加しているメンバー一人ひとりはやらされているだけで、前向きになれず、疲弊感を募らせていたら、それは良い職場、良いチームとは言えません。まずは、一人ひとりのイキイキとした感情が、組織全体に広がっていることが必要です。

 第二の要素は、お互いの関係性です。お互いを認め合い、支え合い、学び合う良い関係が築けているかどうかです。そのベースに信頼や愛情がある。だからこそ、お互いに対する思いやりも、一人ひとりの前向きな感情も生まれてくる。イキイキ感情を支えるベースとしてのあたたか感情が、同じように強く出てこなければ、やはり良い職場にはなりません。

 そして第三の要素は、こうした活動を通じて、自分たちがやっていること、自分自身を肯定できるということです。この仕事ができてよかった、この仲間といてよかった、この会社にいてよかった。自分のやっていることに誇りが持て、自分自身を認めることができる。こうした効力感を組織も個人も感じられる。それが良い職場に必要な第三の要素です。

 

情動から感情へ p51

 一般的に感情と呼んでいるものは、情動、感情の二つに大きく分けられます。

 情動(emotion)は、出来事に対する反応です。多くの場合は、数秒から数分単位で起こるものであり、身体的な反応も伴った、心理的反応だと定義できます。どんな人でも同じようなことをされたら反応の程度に差はあっても、同じような反応を示すもの。人が自分の命を守る、維持するために不可欠なものです。

 これに対して、感情(feeling)は情動が認知のプロセスを経ることによって自分の中で生まれたものです。つまり、起きたことに対して自分がどういう反応したのかを自分で認知したとき、情動は感情に変わります。何かにドキドキしたとき、それが認知のプロセスを経て、それが怖いことだったのか、それとも面白いことだったのか自分の中で意識する。この意識されたものが感情です。

 この認知と感情との関係を最初に研究したのはアーノルドです。彼は、感情は刺激の知覚→認知(有益か、有害か)→感情(肯定的感情、否定的感情)の過程を経て喚起されるとし、認知の重要性を指摘しました。知覚と感情との間に、認知というプロセスが入ることで、感情が大きく変わってしまうと指摘したのです。

 

 情動は出来事への素直な反応なので、その中には自分や社会と向き合うというプロセスは入ってこない。しかし、感情はその起きた出来事への反応を通じて、自分の中から引き出されるものです。

 感情は、人間が社会的動物であるがゆえに、生まれてきたものなのです。

 

認知が感情を決める p54

 情動と違い、感情には認知というシステムが働くことで、同じ出来事なのに、人それぞれが抱く感情が変わるということが起こります。

 

 人は、自分の知識や経験によって積み上げられた認知のフレームというものを持っています。物事に対する見方、感覚的な判断基準です。それが瞬時に作動して、情動として受け取ったものを、感情に転換していきます。このプロセスが、同じ出来事であっても、一人ひとりが違う感情を持つという現象を生むのです。

 このとき、気をつけなければならないことがあります。自分自身が持っている認知のフレーム自体が、正しい情報や経験によって形成されたものなのかどうかを絶えずチェックしないと、「思い込み」や「決めつけ」ということが起こりやすくなります。

 

 こういう行為をする人は、こういう人に違いない。こういう時は、こんなことをするのが当たり前だ。こういった決めつけが、その人の認知を歪めていきます。正しく、冷静に受け止めることができない。自分の中に、強烈なフィルターがあり、そのフィルターを通して認知をしようとしてしまうことで、情動として受け取ったものと異なる感情が生まれてくるのです。

 感情はあなたの中にある認知というシステムがつくり出したものなのです。その認知を歪めてしまうフィルターがあると、感情も歪みます。ですから自分の中で湧いてきた感情がどういった感情なのか、そう感じた原因は自分の受け止め方にあるのではないかと、自分で立ち止まり、チェックすることが必要です。

 

情動はコントロールできるのか p57

 何かを不快だと感じ、恐れる感情や嫌う感情は、自分の身を守るために必要な感情です。何かを快だと感じ、喜びや愛情を持つ感情は、家族や身近な人たちと生きていく、生命を維持し、存続させていくために必要な感情です。こうした感情は抑え込むのではなく、むしろ、きちんと感じられるようにすることのほうが大切です。

 ですから情動はコントロールするというよりも、適切に働くようにすることが大切です。

 

 情動は、生命維持のために必要なものです。だから、制御するよりも、適切に作動することのほうが大切です。自分の感じる力が落ちていないか、意識してみてください。

 

感情はコントロールできるのか p59

 では、感情はコントロールできるのでしょうか。すべきものなのでしょうか。

 結論から言うと、感情は、コントロールできるし、感情が暴走してしまうときは、コントロールすべきものです。それは、暴走した感情が自分や周囲を追い込んでしまい、心や身体を壊してしまう可能性が大きいからです。

 では、どうすれば感情をコントロールできるのでしょうか。それは、自分の中にある認知のフレーム、つまり自分の知識や経験の蓄積によって生み出されたものの見方を変えることです。

 

 認知行動療法は、自分の認知のフレームを知ること。その認知が出来上がった原因を知ること、それが自分の感情に与えている影響を知ることを重視しています。この認知の仕方を変えることで、自分の感情に影響していたものの見方を適正にするとともに、行動化を困難にしていた要因を取り除いていきます。

 

 人は誤解をしやすいし、誤解されやすいもの。自分がまず、相手に対して何か偏った見方、決めつけをしていないか。それが、自分の感情に大きな影響を与えていないかどうかを絶えずチェックしていくことが必要です。

 

組織感情を意図的にマネジメントする p84

 感情をコントロールするのは、感情が暴走したり、制御できなくなることで、心や身体に大きな負担をかけないためです。時に心や身体を壊し、人を壊してしまうからです。だから、まずは異常な感情が組織全体に広まっていないかどうかをみることが第一歩になります。

 しかし、それだけでは、組織感情を適切に扱っていることにはなりません。組織感情を適切に扱うとは、自分たちで必要な組織感情を意図的に引き出していくことです。

 そのために、組織感情をマネジメントするわけです。つまり、適切な感情が組織の中で共有され、それが良い連鎖を生んでいること。この状態をつくり出すのです。

 

 具体的には、次の取り組みを順に行っていくことが必要です。

 ①引き出したい、共有したい組織感情の分布をイメージする

 ②組織感情を把握し、分析する

 ③突出した気になる組織感情があれば、その原因を特定する

 ④もし組織感情を歪めている何らかのフィルターが掛かっていれば、それを取り除くための方法を検討する

 ⑤現状と理想のギャップを踏まえて、適切な感情を引き出す、共有する仕掛けを検討し、実施する

 

 大切なのは、自分たちの中で広まっている感情が何かを客観視するとともに、理想とする組織感情の分布と比較して、何が足りないのか、どういった感情の共有が必要なのかを、みんなで見つけ出すことです。

 

人の心を動かす物語を探してみよう p108

 どうすればビジョンへの共感が生まれるのでしょうか。

 ビジョンが今はない、将来をつくり出すものだとしても、大切なのはその背景にある思いです。その思いがどこから来たのかを伝えることです。

 

 大切なのは、思いの共有です。ビジョンというととかく、将来の姿だけを描き共有することだけを考えてしまいがちですが、大切なのはそのイメージをつくり出す原点にある思いと経験です。各人が本当にお客さんから褒められてうれしかった経験、厳しかったけれども乗り切ったときに思いっきり感じた充実感や達成感、自分だけでなく、みんなで何かを成し遂げたり、乗り越えたときの連帯感。こうした経験とその時の感情を共有していく中で、お互いの思いが引き出され、重なり合っていきます。

 ですから、最初にビジョンを語る人は、ただ単にビジョンを言葉で説明するだけではダメです。なぜ、そうしたビジョンを掲げるのか、その思いがどれだけ強いものなのかを伝えることが必要です。そのビジョンの背景にある、過去の経験やそのときの豊かな感情を自分の言葉で語ることが必要です。そこに裏付けられた思いには、説得力と強い意志が見えてきます。

 そして同時に、それが経営者や会社の思いではなく、聞いている人たちの一人ひとりの思いになっていかなければ、自分の内側から湧き出る高揚感にはなっていきません。

 組織全体がワクワクした期待感、イキイキとした感情に包まれていくためには、組織全体の思いと各人の思いを重ね合わせることが必要なのです。

 

自分のための自律ではなく、他者のための自律 p125

 主体感を引き出す上で、考えるべき視点があります。それは、主体感は各人が自分のために自律的に行動することからしか生まれないのかということです。

 

 大切なのは、何のために主体感を持たなければならないのか、何のために自律的に行動を起こさなければならないのかを知ることです。

 確かに主体感を持つことは、最後は自分の喜びになります。でも、最初から自分の成長や自分の成果のために行動を起こせと言われるよりも、他者のため、他者が喜ぶ姿を見たいがために行動を起こせと言われた方が、自然と抵抗なく踏み出していける人たちも多くいます。

 

 主体的に動くことが当たり前で、そうしていることが「楽しい、うれしい」という状況をつくり出すことです。そして、行動をしたことが喜びになって返ってくる。そんな状況をつくり出すことです。

 主体感はこうした感情に支えられてこそ、引き出される感情なのです。

 

指揮者のいないオーケストラ p209

 あなたは、究極の組織、理想の組織とはどういう組織だと思いますか。

 社員がイキイキと働いていて、お互いを支え合っていて、それでいてお客さんにとっては最高の商品やサービスを絶えず提供できる。一人ひとりによってここで働けることがこの上ない幸せであり、顧客や社会から見ても本当に素晴らしいものを提供している存在になっている。この組織と関わりがある、知っている人たちが、本当にいい組織だね、あなたは幸せだねと言ってくれる。何よりも自分が、本当にこの仕事ができること、この仲間と一緒にいられることに、心から感謝できる。そんな組織なのではないかと思います。

 仕事には厳しく、より良いものを提供することには強い志を共有している。組織全体が社会から必要とされる存在となるために、絶えず高いレベルに向けて努力している。お互いに信頼し合っている、支え合っているからこそ、こうした努力をし続けることができる。このような組織なのではないかと思います。

 自分たちの生み出すアウトプットに対しては厳しいけれども、それをつくり出すお互いに対してはあたたかい。そんな感情が行き交う組織が、一つの理想とする組織なのかもしれません。

 

自分たちの職場は自分たちでつくる p218

 良い職場、良い会社をつくるためには、「みんながリーダー、みんながメンバー」「他者のためにできることは何でも自分からやる」といったコアとなる考え方を共有し、その思いや感情を引き出す取り組みを多面的に行っていくことが必要です。

 

つながり力が、個々人の自律を促す p223

 良い職場、良いチーム、良い会社をつくるものは何か。確かに個人の力は必要だし、全員の結集した力も必要です。でもそれを支えているのは、お互いのことを感じ、お互いに自分のことを伝え合い、お互いに同じ思いを持つ、そんなお互いに交換される感情そのものなのではないでしょうか。

 どんな感情が交換されるのか、それをどう交換し合うのか。これを組織の日常の中に、どのように当たり前に起きていくようにしていくのか。それをみんなで共有して、具体的に交換し合う感情を引き出す仕掛けを考えること。そのちょっとした仕掛けを使って、お互いの感情を持続的に伝え合えるメカニズムをつくり出すこと。これが自分たちで良い職場、良い組織をつくり出すことにつながるのです。

 

目次:

第1章 組織にも感情がある

第2章 そもそも感情って、何?

 1 なぜ、感情が生まれるのか

 2 感情をどうコントロールするか

 3 感情は連鎖する

第3章 組織感情をマネジメントする

 1 組織における感情の位置づけ

 2 マネジメントの方法

第4章 組織感情を引き出し、共有する方法

 1 イキイキ感情を共有したい

 2 あたたか感情を共有したい

 3 ギスギス感情を変えたい

 4 冷え冷え感情を変えたい

第5章 良い職場、良い会社をつくろう

 

アクションプラン:

組織感情をマネジメントする視点をもつ