『鈴木敏文の「統計心理学」』
鈴木敏文の「統計心理学」 「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 勝見明
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/10/13
- メディア: Kindle版
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平成28年12月22日 読了
まとめ:
・過去の経験や常識に捉われず、目の前の顧客から学ぶ
・他社が何をやっているかではなく、顧客が共感するものを提供し、顧客の絶対的満足感を目指す
・「なぜなのか」「何をすべきか」を問い続ける
・コミュニケーションは自分も情報を持ち、相手にメリットを与えることを常に考える
キーワード:
「完売」は「売り手の満足=客の不満足」 p56
過去の成功体験で学んだものや既存の常識から学ぶものはある状況においては有用だが、状況が変わると通用しなくなることが多い。それどころか、過去の成功体験や常識に縛られると、新しいことに対して、「経験的に見て難しい」とか「概念的におかしい」とか何かとブレーキをかけ、害を及ぼすようになる。過去の経験や常識には、ラーニングとアンラーニングの両面があり、過去にラーニング(学習)したことは、同時にアンラーニング(学習し直し)の対象にもなる。
セブン-イレブンは顧客との「共感」を志向する p145
「他店見学をしてはならない」「われわれの競争相手は同業他社ではなく、目まぐるしく変化する顧客のニーズである」といった異色な発言も、競合との競争を意識するのではなく、セブン-イレブンにしかできない商品・サービスの提供をしたいという思いの表れのように感じる。繰り返し語られる「過去の否定」も、競合を超えるのではなく、過去の自分たちを常に乗り越えようとするためのもののように思われる。
だから、他社が何をやっているかではなく、今いる顧客の心理を何よりも直視し、顧客が共感し共鳴するものを提供しようとする。顧客の相対的な満足感ではなく、絶対的な満足感を目指す。
「なぜなのか」「何をすべきか」を問い続ける p150
さまざまなデータ、情報に対して、常にWHYの意識を持って「注意のカーソル」を自在に動かして検証すれば、次に行うべきWHATの仮説が浮かんでくる。HOWの部分に自信があったとしても、それだけでは不十分で、WHYとWHATの問題意識に基づいた仮説・検証の力を身につけなければならない。
なぜ、仮説・検証が重要かといえば、あらゆるものが目まぐるしく変化する中で、マーケットの現実の方が売り手側の「過去の成功体験」や「既存の固定観念」をことごとく飛び越えてしまい、既存のHOWが通用しなくなったからだ。
コミュニケーション能力は、自分で情報を持つところから始まる p190
与えられた情報を丸呑みしたものではなく、自分なりに消化した情報を持ち、相手に提供する。その際、どんな情報が相手にとってメリットがあり、価値を生み出せるかを常に考える。それが相手を刺激し、相手から情報が引き出される。そうしたマン・ツー・マンの直接的なやりとりの中で、相手の実態を把握し、課題を発見し、そのために必要な情報を探りながら、解決策を見つけ出し、相手を納得させていく。双方向のコミュニケーションによって相手を理解し、情報を共有する中で問題を一緒に解決していけば、実績は必ず上がります。
目次:
第1章 鈴木敏文はどのように意思決定しているのか
1 「客観」と「直観」、二つの“カン”で発想する
3 発想の根本にある「五つの視点」
4 天才経営者と凡人ビジネスマンはどこが違うのか
第2章 商売は「経済学」ではなく「心理学」で考えろ
5 顧客は「経済人」でなく「心で動く人間」である
6 顧客の心理を読む「琴線と金銭」の商い
7 鈴木敏文は顧客の心理をこう読む
第3章 半歩先を読む鈴木流「統計術」の極意を学ぶ
8 鈴木流経営学の原点は“隠れた大学院時代”にあった
9 なぜ、「現場主義」ではなく「データ主義」なのか
10 データや情報を読み解く「五つの極意」
第4章 鈴木流「場のつくり方」を学ぶ
11 徹底してダイレクト・コミュニケーションにこだわる
12 繰り返し伝えることにより基本を「血肉化」させる
13 共有化のための「場」を大切にする
第5章 現場の社員たちはどのように鈴木流経営学を実践しているか
14 社員のコミュニケーション能力を重視する
15 仮説・検証を店舗経営に活かす
16 自分の仕事で「物語」をつくれるかどうか
17 顧客の共感を呼ぶ「場」づくりにこそセブン-イレブンの強さがある
アクションプラン:
過去の成功体験や常識に捉われない
顧客を患者・対象者と考えると、同じ疾患でもその人の性格や生活、経過はさまざまであり、同じ作業療法は通用しない。もちろん、過去の経験や先行研究は大切である。しかし、過去の成功体験や常識を無理に当てはめることは誤った結果につながるかもしれない。目の前の患者・対象者のニーズに添えるように、「なぜなのか」「何をすべきか」を常に自分に問い続けることが大事である。