『デザイン思考の道具箱』
- 作者: 奥出直人
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/02
- メディア: 単行本
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平成25年7月24日 読了 90分
まとめ:
デザイン思考こそが、イノベーションを創出し多くの人を惹きつける商品やサービスを生み出して事業を拡大するためのもっとも大切な考え方
目次:
まえがき
第Ⅰ部 デザイン思考で経営する時代
第1章 知識から創造性へ―経営戦略が変わる
第2章 デザイン思考の試み―IDEO、Dスクール、そしてiPod
第Ⅱ部 デザイン思考の道具箱―創造のプロセスとプラクティス
第3章 創造のプロセス―デザイン思考の道具箱
第4章 経験の拡大―創造のプラクティス1
第5章 プロトタイプ思考―創造のプラクティス2
第6章 コラボレーション―創造のプラクティス3
第7章 イノベーションを評価する―創造のプロセスの下流
あとがき
キーワード:
知識や技術は先進国や先端を走る企業が特権的に所有するものではなくなってしまった。インターネットを介して知識は瞬時に世界に広がり、技術者は自在に飛行機でどこにでも移動できるようになった。知識がコモディティになったのだ。 p17
デザインという行為は、自分が普通に暮らしている日常生活を他者の目で眺めることから始めて、何か新しいアイデアを思いついたら、それを表現する構成を考えて、さらに最終的なスタイルを決定するという作業のことである。デザイナーはこのプロセスの専門家であると言っていいが、その根底にある考え方は多分にプロセスと分かちがたいものとなっている。つまり、これが「デザイン思考」であり、それは会社の経営にも役立てることができる。 p19
デザイン思考とは顧客主体のイノベーションの手法である。 p31
消費者を観察することでアイデアを見つけ、それを実行できるコンセプトをつくり、形を考え、メカニズムを考案して設計し、実装し、消費者に渡すまでの製品やサービスづくりの流れを「デザインプロセス」と呼ぶが、デザイン戦略とは、そのデザインプロセスを経営戦略として立案することである。デザイン戦略の本質は、デザイナーと組んで製品やサービスをつくることではない。経営、生産システム、あるいはサービスのあり方すべてに、デザイン思考を適用していくことである。 p41
二十一世紀のモノづくりとは、ネットワーク環境、あるいはユビキタスコンピューティングといわれているような、新しい生活環境の中で、人間が使うものをデザインしてみようということである。そういう製品やサービスというのは、我々の日常生活の中に非常に深く入っていると同時に、二〇世紀的な機械やソフトウェアをつくる技術だけでは到達できないものなのである。 p56
「創造の方法」にとってはまず創造のプロセスの設計が非常に大切である。このプロセスは社会的背景や哲学的背景を踏まえた上でのモノづくりへの考え方、つくり手の問題意識を表す哲学を考えるところから始めて、具体的に何をつくりたいかビジョンを決め、それをもってフィールドワークに行き、どのようなものをつくるかコンセプト/モデルをつくり、機能やインタラクションを検討しながら実際の設計デザインをおこない、実証する。次にビジネスモデルを構築して、実際の運営方法を決定する。この流れが創造のプロセスである。 p76
三つのプラクティス p111
デザイン思考を活用するために使いこなすべき道具は三つある。一つ目は、実際にフィールドつまり現場に行って、物事を感じる能力だ。これを私は、「経験の拡大」と呼んでいる。二番目は、商品やサービスのコンセプトを実際に簡単につくってみながら考えるという「プロトタイプ思考(build to think)」である。三番目は、チームでコラボレーションする能力である。
経験を拡大するとういプラクティスの基本には、フィールドワークという行為がある。これは民族誌(エスノグラフィー)の学者がおこなってきた方法である。私はそのなかでも現象学的社会学(エスノメソドロジー)と呼ばれている方法論を使っている。エスノメソドロジーでは、人と人との相互行為(インタラクション)を重要視する。ここで重要なポイントとなるのは、参与観察(リサーチの対象となる人たちとともに時間を過ごし彼らの世界を知ること)である。観察対象と距離をおいてただ観察するのではなく、観察する相手の活動にみずから参加することが何よりも大切なのである。 p114
プロトタイプをつくる目的は、クライアントや上役を説得することではない。つくることで考える=build to think ためである。これは考えたらまずつくってみるということである。つくることで考え、つくりながら考える。 p145
モノづくりは、「世の中が必要としているかどうか」を基本におくべきである。人間にとってつくりだした商品がどのような意味をもつかどうかだ非常に大事になってくる。 p176
コラボレーションはおこなうために大切なことは、同じ場所に皆で一緒にいて長時間話し合い、共同の作業を続けるということではない。四人なら四人、五人なら五人が時間をシンクロ(同期)させて、同じ時間、同じリズムで動いているということである。そうすると離れていても、同じ目的をもって、同じ仕事をすることもできる。 p190
反復型はシステム要件がきちんと確定していない状態でも、まずは開発に入り、設計、実装、テストを短い時間に繰り返すことでシステムの品質を高めるアプローチをとる方法である。 p197
「創造の方法」は反復型である。反復することによって、価値のあるものが生まれてくる。「創造の方法」を使えば、元に戻ったり進んだりが自由にでき、一度回りきってから再度プロセスを繰り返したりすることがきる。「創造の方法」を利用することによって、途中からでもデザインを洗練させることができるのが大きな特徴である。 p198
アクションプラン:
build to think