『脳のトリセツ』
自分の力を最大限に発揮する! 脳のトリセツ (DO BOOKS)
- 作者: 菅原洋平
- 出版社/メーカー: 同文舘出版
- 発売日: 2014/09/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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平成27年3月26日 読了
まとめ:
脳は多くのエネルギーを消費する。
「言葉」と「自律神経」と「注意」をキーワードに脳のムダづかいをやめる。
脳の使う部分を減らし、自分にできることをやる。
やる気を起こすためには、課題を「ハーフタスク」に設定する。
経験済みのことを50%、未経験のことを50%になるようにする。
大きな挑戦を細かい課題に切り刻み、自分が経験済みのことと、まだ経験していないことを組み合わせる。
キーワード:
脳の仕組みにあった2つの使い方 P24
原則1:脳は、上達するほど使う場所が少なくなる
原則2:脳は、どんな課題でも同じやり方で臨む
これらの2つの原則から、私たちがやるべきことは、次の2つです。
①脳の使う部分を減らす
②自分のできることをやる
脳が力を発揮する鉄則
「エラーレス・ラーニング」とは P26
あなたがこれから新天地で新しい生活をはじめるとします。新しい職場と新しい仲間に囲まれ、心機一転、自分の持っている能力を存分に発揮したいと思っています。
そこであなたは、次のうちのどちらの行動を選びますか?
A:今まで挑戦できなかった大きなことに挑戦する
B:今までと同じように、自分が当然できることをする
あなたが能力を発揮できる正しい選択は、「B」です。
ヒトは、大きな挑戦をしたときに大きく成長する。過去に成功を納めた経験がある人ほど、そんな認識をお持ちだと思います。
「大きな挑戦をすれば、大きく成長できる」と認識していると、常にもっと大きな挑戦をしなければならないという焦りが生まれ、頑張るほど空回りをして成果が上がらずに、疲弊してしまいます。
過去の自分が大きく成長できた理由は、単に大きなことに挑戦したからではなく、もっと大切な仕組みがうまくいっていたからです。
それは、大きな挑戦の中の半分には、”当然できる課題”が入っていた、ということです。
力を発揮するためには「ワクワク」が必要 P30
脳にエラーを起こさないように、当然できることをやる。これは、正しくは、50%は当然できることだけど、残りの50%はやってみないとできるかどうかわからない、という状況です。
50%はすでに経験済みだけど、残りの50%はやってみなければわからないという状況こそ、私たちの脳が最も力を発揮する課題設定であり、神経心理学では「発達の最近接領域」と呼ばれています。
「もうちょっとでできそう」とか「なんとかやれそう」、「今までのやり方が通用しそう」という感じのとき、脳はワクワクやる気が出て、力を発揮するのです。
力を最大限に発揮できる「ハーフタスク」とは P32
やる気が出ないときは、「つまらない」とか「ムリ」と感じます。実はこれは、やる気がないのではなく、課題の設定が間違っているのです。
「つまらない」ことは、いつもしていることで、100%経験済みの課題です。それをすれば、どんな結果になるかは100%わかりきっていて、退屈な課題です。
これでは、脳はやる気になりません。
一方で、「ムリ」だと感じることは、それをしたらどうなるのか、100%結果が読めない課題です。
先が予測できないことが多すぎると、ストレスを感じて、避けたくなってしまいます。もちろん、やる気は起こりません。
やる気が起こらないときに頭の中で「いやだな・・・。やめようかな。でも、やらないとな・・・」と考えている場合にも、脳のエネルギーはどんどん使われます。
これが、脳のムダづかいです。散々迷ってしぶしぶ体を起こすと、どっと疲れてしまいます。
このような事態を避けるには、課題の半分は経験済みにすることが有効です。
この”半分は経験済みの課題”を「ハーフタスク」と呼びます。
脳の2つの原則にしたがってやるべき、
①脳の使う部分を減らす
②自分のできることをやる
という条件を満たしているのが、このハーフタスクです。
ハーフタスクは、仕事の量を半分にするという「量の調節」ではなく、作業内容の「質の調整」をします。これが、能力を発揮させる最適な方法なのです。
「いつも」と「ばっかり」は脳をムダづかいする P58
「ガラッと変えたい!」と考える人には、共通する口癖があります。
それは、「私はいつもダメだ」「失敗ばっかりする」・・・というように、「いつも」と「ばっかり」という言葉です。
「いつも」と「ばっかり」という言葉は、感情的な表現で、感情の記憶を強化します。
言葉での負の感情を強めていると、「今度こそはガラッと変えたい!」という欲求が高まり、悪循環にはまってしまいます。
事実だけを言葉にすれば、成長できる P60
事実だけを口にしていれば、ムダに感情記憶を強めることなく、失敗したときの感情記憶は、脳が睡眠中に消去してくれるので、淡々と目標に向かうことができます。
「いつも」「ばっかり」が目標達成の邪魔をする P62
「いつも」や「ばっかり」という言葉は、小さなことが達成できたとしても、すべてなかったことにしてしまいます。
この2つの言葉を使わずに、事実だけを口に出してみると、自然に気持ちが軽くなるのがおわかりいただけるはずです。これが、ムダに感情記憶を強めずに済んだサインです。
脳が事実を把握できれば、できたことを発見でき、それをもとにハーフタスクをつくることができます。そうすれば、自然にワクワクやる気が出てきます。
まずは、「いつも◯◯」と「◯◯ばっかり」の2つの言葉をやめてみましょう。
脳は独り言を言うと、行動をリハーサルする P65
言葉は、私たち自身の脳の使い方に大きく影響します。
私たちは、普段、相手に意思を伝えるために言葉を使っていますが、言葉は、伝える以外の役割も果たしています。
その役割とは、自分の行動を脳の中でリハーサルすることです。
言葉は動作を予測する役割を持つ P68
他人の動作を見ただけで、脳の中で同じ動作がリハーサルされれば、いざ自分が行動しようと思ったときに、どんな動きをすればよいか、予測が立ちます。
予測が立っていれば、脳内では一度経験した行動なので、その行動は、半分は経験済みのハーフタスクになります。一流の人と行動を伴にできる環境は、私たちの脳が成長するためにはとてもいい環境なのです。
では、自分の身の周りに一流の人がいない場合はどうすればいいでしょうか?
そこで、言葉が役に立つのです。
見て学ぶミラーニューロン・システムの一部は、ヒトの場合、言葉を話すブローカ野と同じ。ブローカ野は、動作を順番通り並べる役割を担っていて、私たちがこれからやろうとしていることを言語化する(つぶやく)と、行動するために必要な動作が、脳の中で順番通り並べられて、リハーサルされるのです。
言葉を口に出したときは「外言語化」、頭の中だけでつぶやいた場合は「内言語化」と呼ばれます。
やろうと思っていることをつぶやく。これなら、一流の人がそばにいなくても、簡単に実行できますね。
言語化を使いこなして、手軽に自分の力を発揮しましょう。
言語化は、何をつぶやくかが重要 P71
言語化を上手に活用するためには、つぶやく言葉に注意しなければなりません。
言語化を使う重要なポイントは、行動する前に、具体的な行動を言葉にするということです。
言語化は、具体的になればなるほど、行動化できます。
ここで注意することは、「ちゃんと」とか「しっかり」という感情的な表現を使わないことです。あくまで事実だけをつぶやくと、脳はとてもリハーサルしやすくなります。
口に出して行動する、ということに慣れてきたら、頭の中でつぶやくだけの「内言語化」でも、同等の効果が得られます。
ボトムアップ型は具体的に、
トップダウン型はメタファー言語でつぶやく P77
人には脳の使い方のタイプがあります。
脳の使い方は、手順通りに行ってゴールを目指す「ボトムアップ型」と、ゴールのイメージを描いて行動する「トップダウン型」の2つに大きく分けられます。
例えば、あなたが旅行の計画をするとします。
あなたは、日程や交通手段と調べて行き先を絞っていきますか?それとも、ここに行きたい!と頭の中でそこに行った自分をイメージしますか?
行動を具体的に言語化する方法は、ボトムアップ型の人に向いています。具体的な手順が順番通り並べられることで、行動できるタイプだからです。
それに対し、トップダウン型の人は、イメージが浮かぶと、それをしている自分の動作がひとかたまりになって脳の中でリハーサルされます。そこには、順番があるわけではなく、あくまでも「こんな感じ」というイメージのかたまりがあるだけです。
そこで、トップダウン型の人が言語を使うときには、「◯◯みたい」という「メタファー言語」が効果的です。「ササッとやる」「シャキッとする」などの擬音語や、「ホテルマンみたいに」「プレゼントを渡す感じで」などの比喩を使うことで、脳はそのモードになりきるので、すんなり行動に移せます。
大切なのは、自分のイメージを言葉にするということです。他人から言われた言葉ではなく、自分で比喩をつくるのです。
メタファー言語は、動作の記憶のかたまりです。
ひとかたまりのイメージを頭の中で呼び起こすことができれば、それ1つで一連の行動をスムーズにすることができます。
相手の行動を変える4つの言葉 P82
人と会話をするときは、自分が話した内容を、相手にしっかりと理解してもらいたいものです。
しかし、相手の反応が鈍いと、焦って自分ばかりしゃべってしまい、余計相手に理解しにくい状況をつくってしまった、という経験はありませんか?
自分が伝えた内容を、相手が理解して行動するには、相手の脳の中でもリハーサルされなければなりません。そんなときには、相手の脳の中にハーフタスクをつくる4つの言葉を持ちましょう。
相手がボトムアップ型の場合、頭の中が整理できたときは、話しはじめに
「今までは・・・」
「ということは・・・」
という言葉が出ます。これが出たら、順序通り理解するボトムアップ型の脳が、話を理解できたというサインです。
一方、トップダウン型の場合は、
「じゃあ・・・」
「例えば・・・」
という言葉が出ます。脳の中の記憶のかたまりが見つかったサインです。
これらの言葉が出れば、相手の脳はハーフタスクの状態なので、こちらが伝えたかったことが理解されて、動いてくれます。
物事を確実に前進させるためには、自分の脳にも、相手の脳にもハーフタスクをつくることが重要なのです。
感情と情動を区別する P114
一般的に感情と呼ばれているものは、神経心理学では、「感情(feeling)」と「情動(emotion)」の2つに区別されます。
情動とは、何らかの刺激を受けたときの反応(内臓活動や自律神経活動など)を指します。胃がきりきり傷んだり、背中にびっしょり汗をかくなど、体の反応として実際に確認できるものです。
それに対して、感情とは、その情動反応をしているときの意識、気持ちです。呼吸が速くなっているときに不安だった、冷や汗が出てきたときに焦っていたなど、この不安や焦りの部分が感情です。
つまり、感情とは確認できないもの、情動とは確認できるものと定義づけすることができます。
脳の仕組みを変えれば、感情に振り回されずに済む P116
大切なのは、感情のムダづかいをやめることです。
私たちは、不安や焦りがもとで行動することはあります。しかし、その不安や焦りの存在は、とてもあいまいなものです。
実際にあるのかないのかわからないものに、エネルギーをムダづかいするのではなく、事実が確認できる情動反応を基準に、自分の行動を決めるようにしてみましょう。
情動を基準にすることができれば、経験したことのある事実をもとに、やるべきことをハーフタスクに設定することができます。
不安は、呼吸によって初めて感じる P119
あなたは、自分が不安なときに、どうやって「自分が不安である」ことに気づきますか?
私たちは、不安になっているときに、ただ不安になっているだけではなく、何らかの自律神経の反応を引き起こしています。
それでは、自分が不安に思うのが先なのでしょうか、体が不安な反応をするのが先なのでしょうか?
実は、不安になるのは体の反応のほうが先で、体の反応があってから、私たちは不安を感じているのです。
この現象としてわかりやすいのが、呼吸です。私たちは、「不安な呼吸」をしたことで不安になるのです。
呼吸の3つの種類
①代謝性呼吸(脊髄で制御)
自分では制御できない不随意(自動的)な呼吸です。その名の通り、体内で代謝活動をするためのもので、言わば私たちが生きるためにしている呼吸です。
②行動性呼吸(脊髄で制御)
息を大きく吸おう、など自分で制御することができる随意的な呼吸です。
③情動性呼吸(大脳で制御)
自分で制御することができない不随意な呼吸で、これが心の様子に直結しています。不安なときに呼吸が速く浅くなるのは、この③のパターンです。
私たちの呼吸は、この3つのパターンが絶妙に入れ替わることで、さまざまな場面に適応しています。
呼吸が不安な気持ちを呼び起こす P122
①と②は、脊髄で制御されていますが、③は脳で制御されています。
③を制御しているのは、大脳の中の「扁桃体」という部位です。
扁桃体が不快な刺激を発見して活発になれば、③の速く浅い、「不安な呼吸」になります。
それでは、③の不安な呼吸になるには、必ず不快な刺激が必要なのでしょうか?
実は、私たちの脳では、特に不快ではないのに、扁桃体が活発になると③の不安な呼吸になるのです。
「不安」という感情をつくるためには、③の不安な呼吸が必要なのです。
私たちは、自分が不安な呼吸をしていることで、初めて自分が不安であることを感じる、ということです。
私たちは、たとえ不安なことがあったとしても、呼吸さえ安定させてしまえば、それほど不安に感じなくなるという仕組みになっているのです。
このように、情動を基準に体を整えれば、感情のムダづかいを防ぐことができます。
ボーっとしているときの脳内「まとめモード」を使いこなす P159
私たちの脳には、何かに集中しているときに使われる注意関連神経回路と、ボーっとしているときに使われるデフォルト・モード神経回路があります。
何かに注意を向ける注意関連神経回路が「集中モード」であるのに対して、デフォルト・モード神経回路は、脳の中の情報処理をしています。言わば「まとめモード」です。
没頭しっぱなしよりも、合間に単純作業が挟まり、まとめモードが起動することがひらめきにつながるのです。
ONとOFFの切り替えが上手な人と下手な人の違い P165
2つのモードは本来、自動的に切り替わりますが、この切り替えを助ける行動をしている人は、切り替え能力が高くなります。
注意関連神経回路とデフォルト・モード神経回路は、それぞれ、大脳の帯状回に位置しています。
左右の脳をつないでいる脳梁より前が前部帯状回で、ここが注意関連神経回路を担っています。前部帯状回は、快か不快かを判断する扁桃体や、ポジティブ/ネガティブを分けている前頭眼窩部と強く関連していて、情動を司る領域です。
脳梁より後ろは後部帯状回で、デフォルト・モード神経回路を担っています。
ここは、運動を司る領域です。ぶらぶら歩いたり、手作業をするなど、体を動かしているとデフォルト・モード神経回路が活発になって、ひらめきが生まれます。
つまり、非常に単純化すると、頭を使うことと体を使うことを交互に行なっていれば、2つのモードの切り替え能力が高まる、と考えられます。
相手をやる気にさせるほめ方 P180
相手のやる気を引き出すためには、相手の脳にハーフタスクをつくりましょう。相手の脳に、自分の行動の記憶をしっかりつくるのです。
私たちは自分の意志で行動していますが、自分がしたことはあまり覚えていません。あいまいな記憶のままでは、事実を振り返り、できたことを正確に把握することができないので、ハーフタスクがつくられにくくなります。
そこで、その人が、どんなつもりで何をしたのかを具体的にフィードバックすると、相手は自分の行動を記憶することができます。
何がよくて何が改善できるかを伝える P182
間違った行動を振り返っても、間違わないようにする対策は見えてきません。
結果的には間違った行動でも、細かく見ていけば、その中に必ずよかった行動があります。それを見つけて、具体的に伝えてみましょう。
相手に伝えるときは、伝える順番が大切です。
私たちは多くの場合、「悪いこと→よいこと」という順番で伝えがちです。
「もっと◯◯しておくべきだったよね。まあ、でも、◯◯したことはよかったよ」
という感じです。
これを、「よいこと→悪いこと」という順番に変えてみると、
「◯◯したことはよかった。ただ、こうすれば、もっと◯◯になったと思うよ」
となります。随分印象が違いますよね。
最初の順番では、自分がしていない行動を伝えられ、その後で、自分のした行動が伝えられています。
脳にハーフタスクをつくるには、自分がした行動、つまり事実の記憶が必要なのですが、していないことを伝えられると、未知の部分が増え、脳はストレスを感じて「ムリ」と思ってしまいます。
伝える順番を逆にして、自分がしたことを最初に伝えられるだけで、脳の中に50%の「経験済みのこと」をつくることができるので、相手はやる気になります。
よいことほど、具体的に伝える P185
ミスとは逆に、相手がよいことをしたときには「よかった」「すごい」などあいまいなことしか伝えないので、相手の脳によかった行動の記憶を積み上げることができません。結果がよかったということだけを伝えられても、次の行動の見通しを立てる材料にはならないのです。
相手の脳を変えるには、よいことをしたときほど、具体的にどんな行動をしたのかをフィードバックする必要があります。
とにかく私たちは、自分の行動の記憶があいまいです。相手の能力を高めたいならば、よかった行動の記憶を積み上げていくことが先決なのです。
相手がよい行動をしたときほど、それを具体的に伝えるようにしてみましょう。
目次:
1章 「脳のムダづかい」していませんか?
2章 脳のムダづかいをやめる習慣1「言葉」を変える
3章 脳のムダづかいをやめる習慣2「自律神経」を変える
4章 脳のムダづかいをやめる習慣3「注意」を変える
5章 脳の使い方を変えれば、相手も変わる
アクションプラン:
自分にも相手にもハーフタスクをつくる