アウトプット日記

読んだ本、文献、作業療法に関する勉強会・研修会のまとめ。個人的な。

「せん妄」について

運動器OT勉強会

日時:平成25年12月5日(木) 18時~19時

内容:

 1.診断基準

 2.評価

 3.予測因子

 4.予防

 

せん妄とは?

 せん妄(せんもう、譫妄、delirium)は、意識混濁に加えて幻覚や錯覚が見られるような状態。健康な人でも寝ている人を強引に起こすと同じ症状を起こす。ICUやCCUで管理されている患者によく起こる。

 急激な精神運動興奮(カテーテルを引き抜くなど)や、問診上明らかな見当識障害で気がつかれることが多い。 大手術後の患者(術後せん妄)、アルツハイマー病、脳卒中、代謝障害、アルコール依存症の患者にもみられる。

Wikipedia

 

診断基準

定義(DSM-Ⅳ)

A.意識障害のために周囲を認識する意識生命度が低下しており、注意を集中・維持・転換する能力の低下を伴う

B.認知能力の変化(記銘力低下、見当識障害、言語能力の障害など)、あるいは知覚能力の障害が出現するが、これらはすでに存在していた痴呆によってはよく説明できない

C.この障害は短期間(通常数時間から数日)に発現し、一日のうちで変化する

D.病歴、診察、あるいは検査データを根拠に直接の原因を特定する

 1)体疾患 2)薬物・物質による中毒 3)離脱性 4)多要因性 5)その他

 

定義:Confusion Assessment Methods (CAM) 

①急性の発症と症状の動揺

②注意力の欠如

③思考の錯乱

④意識レベルの変化

2つ目までは必須項目であり、あとひとつをみたせば診断してよい。

 

せん妄の症状

1.意識と注意の障害:中核症状

 a. 意識:自己と周囲の状況に対する認識

 b. 注意の要素:選択性、持続性、転導性、多方向性、感受性

2.覚醒度の障害:亢進と低下、不規則に変動

3.睡眠-覚醒リズムの障害:昼間の眠気、夜間の不穏、昼夜逆転

4.記憶・見当識障害

 a. 記憶:前向健忘、逆行健忘、記憶錯誤

 b. 見当識障害:時間、場所、人物の順に障害、重複現象

5.知覚の障害:視覚の障害が最も多い

  錯覚、幻覚:視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚

6.言語の障害:錯誤、発話量、声量とも活動性と並行

7.思考の障害

  一貫性を失い、理解が困難であることが多い

  内容:貧困、不適切、妄想的、被害的

8.気分の易変性

9.運動維持困難

10.精神運動性障害

 a. Hyperactive type

  興奮、徘徊、多弁、感情的に不安定

  幻覚、妄想が明らかで、治療を行う上で難渋する

 b. Hypoactive type

  嗜眠、傾眠傾向で臥床している場合が多い

(藪井裕光:せん妄.松下正明 編,臨床精神医学講座 S7,総合診療における精神医学.中山書店,東京,2000,104‐115.)

 

 hypoactive typeは、臨床症状に乏しいため、診断が困難で医師や看護師などの医療スタッフに見逃されている場合が多い。ちなみに一般病棟では33~66%で見逃されていたという報告(1)や、術後では外科医や看護師の記録と精神科医の診断では28%でせん妄が見逃されていたという報告(2)もある。

(古家仁 編著:術後精神障害 せん妄を中心とした対処法.真興交易,東京,2003,41‐44.)

(1)Am J Med. 1994 Sep;97(3):278-88.

The dilemma of delirium: clinical and research controversies regarding diagnosis and evaluation of delirium in hospitalized elderly medical patients.

Inouye SK.

(2)J Am Geriatr Soc. 1991 Aug;39(8):760-5.

Underdiagnosis and poor documentation of acute confusional states in elderly hip fracture patients.

Gustafson Y, Brännström B, Norberg A, Bucht G, Winblad B.

 

どの程度見逃されるか?

Trained clinical researcher VS Nurse

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※患者に近いNsでもhypo active typeのせん妄は見逃されやすい。

 

せん妄が見逃される要因

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※hypo active typeが最も多い。

(Nurses' Recognition of Delirium and Its Symptoms Comparison of Nurse and Researcher Ratings 

Arch Intern Med. 2001;161(20):2467-2473. doi:10.1001/archinte.161.20.2467.)

 

発症率

入院患者の発症率は10~30%

術後疼痛、環境変化、拘束感などから発症率は高くなる

心臓手術: 平均38.5%

整形外科手術: 平均47.3%

肺移植手術: 平均73.0%

それ以外の手術: 平均11.4%

(術後精神障害 せん妄を中心とした対処法 2003)

 

評価

せん妄評価尺度(Delirium Rating Scale: DRS)

日本語版NEECHAM混乱/錯乱スケール

CAM-ICU(The Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit)

ICDSC(Intensive Care Delirium Screening Checklist)

MADS(Memorial Delirium Assessment Scale)

 

せん妄評価尺度(DRS)

・せん妄の有無と重症度を評価

・10項目

・0~3点

・32点満点中20点以上はせん妄の疑い

項目

1.症状発現の時間的経過

2.知覚の障害

3.幻覚のタイプ

4.妄想

5.精神運動興奮

6.認知機能検査

7.身体的異常

8.睡眠・覚醒周期の障害

9.感情不安定

10.症状の変動性

 

日本語版NEECHAM混乱/錯乱スケール

・NEECHAM Confusion Scale(NCS)

・1996年Neelonらによって開発された観察法によるせん妄の測定・評価スケール

・認知・情報処理,行動,生理学的コントロールの3つのサブスケールから構成

・合計点(30点満点)によって中程度~重度、軽度または発症初期、発症の危険性が高い、正常の4段階に分類

・日本語版を2000年に綿貫らが開発

 

CAM-ICU

・評価する時点でのせん妄の有無を評価

・挿管や気管切開で発声できない患者にも使用できる

・評価にかかる時間が短い

・重症度の評価ができない

・患者の協力が必要

 

ICDSC

・8時間、または24時間以内の情報に基づき、せん妄の有無を評価できる

・挿管や気管切開で発声できない患者にも使用できる

・評価にかかる時間が短い

・患者の協力を必要としない

・評価者が実際に見た事象以外に記録や証言などからも判断できる

・カットオフ値は4点

 

MADS

・Breitbert Wらが1997年に開発

・せん妄の重症度評価

・10項目 30点満点

・松岡が2001年に日本語版を開発

・せん妄と非せん妄のカットオフ値は10点

・DRS、MMSEと有意な相関

 

評価の頻度

・予防・早期発見のために、一日に1回は行うことが望ましい

・患者の状態が変化したら再度評価する

・CAM-ICU以外は観察し評価する項目が含まれており、患者の状態を的確に評価するために適切な評価間隔をあける必要がある

・日本語版ニーチャム混乱・錯乱スケールでは最低数時間は患者の経過を観察し、実際に日常生活援助を行い評価するよう推奨

・ツールを用いたせん妄の評価では、対象とする患者に適したものを選択し、ツールの目的や評価方法を正しく理解して活用することが重要

 

せん妄に関連する要因

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Lipowskiらの分類

 

○準備因子

・年齢

・性別

・Body Mass Index(BMI

・認知症の有無

 

○直接原因

・せん妄の原因となる主要な疾患

・バイタルサインの変化

・窒素尿素、電解質の異常

・Hb(ヘモグロビン)、Ht(ヘマトクリット値)の低下

H2ブロッカーの使用

 

○誘発因子

・感覚機能障害の有無

・入院歴・入院から手術までの期間

・睡眠状況

・手術の侵襲度

・ルート類の数

・体動制限の有無

 

発生予測

・大腸癌手術

・75歳以上の71症例

・術後せん妄は71例中16例(22.5%)に発生

・後期高齢者大腸癌手術例において、HDS-Rは術後せん妄発症予測に有用

○関連因子

・HDS-R<25点

BMI

・脳血管疾患の有無

眠剤常用歴

(高齢者大腸癌術後せん妄発生予測における長谷川式簡易知能評価スケールの有用 日本大腸肛門病学会雑誌 65(2), 43-50, 2012-02-01 )

 

・腹部外科手術

・75歳以上の84例

・NEECHMスコア

・48例(57.1%)が術後10日までに20点未満を示した

・術後第3病日までのせん妄発症が多い

○関連因子

・年齢

・MMSE<25点

・NEECHAM<27点

(高齢者腹部外科手術後のせん妄に関する研究 日本消化器外科学会雑誌 42(7), 1349, 2009-07-01)

 

・高齢術後患者48名

・NEECHAM

・術前から術後5日目まで

・せん妄発症48名中2名

・せん妄高リスク群:25名

・正常群:21名

○関連因子

・手術侵襲が大きい

・術後貧血状態にある

・ドレーン・ルート類が多く挿入されている

(高齢手術患者のせん妄発症要因に関する検討 富山医科薬科大学看護学会 2005.7)

 

・呼吸器疾患患者

・65歳以上43名

・せん妄評価尺度(ナース版)

・12点以上をせん妄群

・13名(30.2%)がせん妄

・せん妄群と非せん妄群を比較

・認知症、呼吸器症状で有意

○関連因子

・年齢

・認知症

・呼吸器症状

聴覚障害

(高齢期呼吸器疾患患者のせん妄発症に関連した要因と発症パターンの特徴 福岡大医紀 38(4),187-194,2011)

 

・全身麻酔下での整形手術

・65歳以上 187名

・NEECHAM

・せん妄群15名

・平均80.4歳

○関連因子

・年齢

・認知症の既往

H2ブロッカー(注射)の使用

・聴力障害

・術中の出血量

・術後の体動制限

(整形外科病棟の高齢患者における術後せん妄発症要因の検討 神大院保健紀要 第25巻 2009)

 

・泌尿器科手術患者

・65歳以上 502名

・せん妄発症22名

・発症率:

  腰椎麻酔:2.2%

  全身麻酔:17.1%

・発症ピーク:

  全身麻酔:術後2-3日

  腰椎麻酔:術当日

○関連因子

・不眠・昼夜逆転

・視覚障害者

・鎮痛・鎮静剤の使用

(高齢手術患者の術後せん妄発症率と発症状況の分析に関する研究 群馬保健学紀要 23:109-116,2002)

 

・大腿骨頚部骨折患者

・71名 平均80.7歳

・せん妄発症19例

・発症率26.8%

・DRS

○関連因子

・術前意識障害

・抗パーキンソン薬、H2ブロッカー、抗うつ薬の三種薬剤

(大腿骨頚部骨折患者における術後せん妄の予測 川崎医会誌 25(2):97-104,1999)

 

当院で考えられる予測因子

・年齢

・認知症(HDS-R<25、MMSE<25)

・手術侵襲(貧血、ルート類)

・感覚障害(視覚・聴覚障害

・体動制限(下肢骨折、圧迫骨折、THAなど)

 

せん妄が持続すると

・91人(平均79歳)の術後患者

・45%が術後、回復室内で「早期せん妄」

・全体の約4分の3は回復室で発症

・早期せん妄患者の39%が介護施設に入所

・早期せん妄のない患者で施設入所したのは3%

・早期せん妄がみられたが手術当日の術後は正常だった患者では、26%が退院後に施設に入所

(Anesthesia & Analgesia, news release, July 24, 2013)

 

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※せん妄の期間と死亡率は有意に関連

(Days of delirium are associated with 1-year mortality in an older intensive care unit population. Am J RCCM 2009)

 

予防

1)環境の調整を行う

患者にとってなじみのある病床環境を整える

周囲の人や看護師などの人的環境による緊張を和らげる

騒音や機械音の軽減を図る適切な照明に調節する

部屋の移動を最小限にする

 

2)視覚や聴覚など、感覚遮断を少なくする

日常使っている眼鏡や補聴器を使用してもらい、感覚情報を遮断しない

時間や場所がわかるような情報提供をする

 

3)不安を軽減する

明確、かつ簡潔なコミュニケーションを図る

理解力に応じた説明を行う

 

4)全身状態のバランスを保つ

脱水防止、水分出納バランス :水分摂取に注意を払う

電解質バランス :血液データに注意を払う

痛み :痛みのマネジメントを行う

便秘・下痢 :排便の調整を行う

薬の副作用 :早期発見し、調整する

 

5)活動と休息のバランス/睡眠を調節する

日中の活動を増やし、夜間の睡眠がとれるように配慮する

必要時、眠剤を調整する

 

6)拘束感をとる

同じ姿勢・状態を長時間続けない

早期離床を図る

ライン類の早期抜去を図る

(参考:「せん妄(Delirium)について」和田明 福島県立医科大学医学部神経精神医学講座)

 

せん妄への予防策を行うと

・高齢者852名(70歳以上)

 ・The Elder Life Program

・介入群と通常ケア群を比較

・6つの危険要因を考慮

 認知障害、睡眠障害、運動機能低下、視覚障害、聴覚障害、脱水

・発症率 9.9%:15%

・早期のケアは重要

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(A multicomponent intervention to prevent delirium in hospitalized older patients.NEJM 1999;340:669-676)

 

まとめ:

・発症率は10~30%

・年齢、認知症、手術侵襲、感覚障害、体動制限などが予測因子

・定期的に評価を行い経過を追う

・せん妄が持続すると自宅復帰率が低下

・予防は誘発要因を少なくすること

・病棟スタッフとの協力が必要

 

参考にさせていただいたサイト:

医学知識の活かし方:http://gendamar.com/eldery/282/

かんかん!―看護師のためのwebマガジン by 医学書院:http://igs-kankan.com/article/2012/04/000583/

健康長寿ネット:http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000000800/hpg000000773.htm

ヘルスデージャパン:http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&view=article&id=4600:2013812&catid=20&Itemid=98

Wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9B%E3%82%93%E5%A6%84

 

 

 

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