アウトプット日記

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『悩みを聴く技術―ディープ・リスニング入門』

 

悩みを聴く技術―ディープ・リスニング入門

悩みを聴く技術―ディープ・リスニング入門

 

 平成25年10月24日 読了 38分

 

まとめ:

ディープ・リスニングの目的は感情を分かち合うこと。

聴き手は、話し手の邪魔をせず、決めつけない態度で話し手の話を聴く。

ディープ・リスニングの第一歩は「自分は答えを示すためにここにいるのではない、ここにいるのは問題を理解するためであり、おそらくそのうちに話し手は自分で答えを見つけるだろう」ということを受け入れること。

 

目次:

読者のみなさんへ

Ⅰ 耳をすます、ディープ・リスニング

Lesson 01 聴くことは手伝うこと

Lesson 02 こんなふうに聴いてみると・・・

Ⅱ ディープ・リスニングの実際

Lesson 03 あるセラピストの聴き方

Ⅲ ディープ・リスニング・レッスン

Lesson 04 「問題」を聴く <問題>と<解決>の2段階

Lesson 05 「感情」を聴く <キーワード>と<ガイド・フレーズ>

Lesson 06 「からだ」を聴く <アチューンメント>

Lesson 07 聴くことをあきらめない 対話のツール<メタコミュニケーション>

 

キーワード:

人の話に深く耳を傾ける経験ががまれな理由は、私たちが「スピード化」した「あわだただしい」社会に暮らしているからです。ディープ・リスニングの第一原則はギアチェンジをして、ペースを落とすことです。

まずは聴き手自身が動きのペースを落としましょう。それから話し手が心の内側を感じ、そこで何が起きているかを感じ、時間をかけて「私は~と感じています」と話してもらうように励まします。 p9

 

大切な点は、ディープ・リスニングでは話し手の邪魔をしないこと。相手の話を中断したりはしません。

さらに大切な点は、決めつけないことです。

聴き手は、心理学や発達などの概念や理論をつめこんで頭が混乱することはなるべく避けるようにしてください。ディープ・リスニングの目的の基本は、話す人と聴く人がいいコンタクトを取ることにあります。これは「関係性」に関わることがらで、共感、思いやり、きちんと相手のために存在すること、オープンな状態、決めつけないことが含まれます。

相手のリアリティに対してオープンな心でのぞみます。 p11

 

人は「自分の問題について何を話したか」よりも「自分の話を聴いてくれる相手をどう感じたか、相手にどのような気持をいだいたか」について、覚えているものです。

ディープ・リスニングには話し手の立場では何を話しても「正しい、まちがっている」ということはなく、聴き手としても聴き方に正誤はないという特別な自由があります。「自分のしていることは正しいのだろうか」という疑問を、私たちは自動的にもってしまいがちですから、この「決めつけない態度」は大切です。話し手もそれによって安心できます。 p20

 

心理的な苦しみを味わっている人の話に耳を傾けることは、解決策を探ることを当然の目的とするものではありません。

話を聴く目的、それは、話し手が自分の苦しみをわかちあうことにあります。 p33

 

ダメージを与える12の聴き方 p40

1.「早すぎるアドバイス」のワナ

 こうしたらいいんじゃないかな

2.「自分の話」のワナ

 私にも同じことがあったわ。私の場合は・・・

3.「中断、さえぎり」のワナ

 あ、それってこういうことでしょ。

4.「見当違いの共感」のワナ

 あなたがどう感じているかわかります。

 私も同じ経験がありますから。

5.「解釈」のワナ

 あなたは嫉妬してるんです。

6.「重要性の否定」のワナ

 考えすぎ、考えすぎ!

 もっとポジティブに考えたら。

7.「停滞」のワナ

 それは前に聞いたよ?

 ずっと同じことを言っているような気がするんだけど・・・

8.「たえまない否定」のワナ

 それは、どうみてもあなたがおかしいよ。

9.「お説教」のワナ

 それはわがままだよ。もっと大人になりなよ。

10.「中傷」のワナ

 普通の人はそんなふうには考えないよ。

 ちょっとおかしいんじゃないの。

11.「皮肉」のワナ

 世捨て人にでもなればいいんじゃない。

12.その他

 感情への怖れ

 (こんなに泣くなんて、この人はおかしいんじゃないか。ちょっと怖いよ・・・)

 

まず大切なのは、話し手が自分の内面の考えを怖れなく表に出せる「安全な場所」をつくってあげることです。

ディープ・リスニングがうまく進むと、話し手はほっと息をつくます。

この安堵感は、聴き手にも伝わります。聴き手も自分のからだのなかに変化を感じるでしょう。 p59

 

ディープ・リスニングでは話し手の評価や判断に対して「賛成」したり「反対」したりする必要はありません。大切なことは話し手の気持ちを受け取り、感情とともにその見解を聞き、受容の態度を示すことです。 p75

 

ディープ・リスニングという特別のプロセスでは、多くの場合「何も言わずにいる」ことが必要になります。

人生では多くの状況で私たちに必要となるのは行動することです。

値打ちをもつのは私たちの行為です。生活への適応、ストレスへの対処、ネガティブな問題をポジティブなチャレンジに変える、「問題」はできるだけはやく処理して前進する、これらすべてに求められるのは「アクティブなモード」です。ディープ・リスニングに必要なのはこの態度の反対、つまり「受容的なモード」です。ギアを切り替えなければなりません。 p103

 

はじめに「問題」と「解決」について説明します。車が動かない、冷蔵庫にミルクがない、ひどい交通渋滞などの問題にであえば、「問題を解決することがチャレンジだ」と普通は考えます。そのときには車を修理する、ミルクを買う、渋滞を切り抜けて家路につけばいい!のです。

ところが、ディープ・リスニングにおけるチャレンジとは解決や答えにたどり着くことではないのです。チャレンジは「話し手と一緒にいながら話を聞く」ことを指します。それは「問題に付き合う」ことを意味します。ですからギアを「いつもの現実」から「個人の体験の現実」、変容の現実に切り替える必要があるのです。 p105

 

聴き手のチャレンジとは、「自分の答えを話さないこと」です。考える姿勢を変え、「いま何が起きているのだろうか」と問い返します。

つまりディープ・リスニングの第一歩は「自分は答えを示すためにここにいるのではない、ここにいるのは問題を理解するためであり、おそらくそのうちに話し手は自分で答えを見つけるだろう」ということを受け入れることです。

ですから聴き手のチャレンジは、答えを提供するという満足を手放すことです。 p106

 

聴き手が自分の答えが「正しい」と信じている場合には、それを何とか伝えようとするでしょう。すると話し手は話を中断され、押しつけを感じる可能性があります。ディープ・リスニングには謙虚さが必要です。

つまりすぐに思いついた答えは頭での作業によるものであり、話してにとっては常に「正しい」という理由はどこにもない、という認識です。大切なのは、聴き手自身が考えることとは別に、話し手にとって「正しい」ことはなんだろうか、と、じっくりと話に耳を傾けて、理解しようとする態度です。 p108

 

「話し手の助けになるためには、何を言えばいいんだろう?」―これは聴き手の基本的な疑問のひとつです。

これまで見てきたように、聴き手は、話し手の話を「決めつけないこと、さえぎらないこと、早まったアドバイスはしないこと」が大切です。

・・・しかし、これらは「してはいけないこと」であって、「何が言えるんだろう?」という疑問への答えにはなっていません。

返答は、聴き手の心に侵入するようなものにならないことが大切です。聴き手は、ここで紹介する二つの方法を心にとめておくことで、応答に注意深くなり、話し手の邪魔をしないで一緒にいることができるようになるでしょう。

感情を深めるための「キーワード」と「ガイド・フレーズ」は、ディープ・リスニングの際に「何を言ったらいいのか」を考える際の、「応答のための基本道具」になります。

「キーワード」と「キーフレーズ」は、話し手の話す言葉のなかで、感情のエネルギーが特に込められた、特別な言葉を指します。

たとえば、話し手が次のように言うとします。

 話し手:仕事を終えて家に帰ったら家は空っぽ、誰もいなかった。カミナリに打たれたような衝撃でした。

キーフレーズは「カミナリに打たれた」でしょう。この言葉に、感情エネルギーが込められています。

聴き手は、こう言うことができるでしょう。

 聴き手:その「カミナリに打たれた」という感じですが、それがどんな感情だったか話してもらえますか。

聴き手はこの対応で、二つのことをしています。

ひとつは「カミナリに打たれた」という言葉に注目し、そのキーフレーズを話し手に対してくりかえしています。キーフレーズをくりかえすことで、その言葉を話し手の心の内側で反響させています。

二つ目は「それがどのようなものであったかを話せますか」と付け加えることで、探索の方向を示唆しています。これは探索の「方向」を指すことから、「ガイド・フレーズ」と呼ばれています。 p126

 

聴き手はキーワードがつかめるようになれば、それを「ガイド・フレーズ」と組み合わせて使うことができます。それによって話し手に探索の道筋を提案します。「ガイド・フレーズ」には「正しい」ものと「まちがった」ものはありません。それぞれの「ガイド・フレーズ」には、内面のドアを開ける可能性があり、そこから無意識が出てくるのであって、正しい方法がひとつだけあるわけではありません。「ガイド・フレーズ」の選択は聴き手の直感で決まります。よく使う「ガイド・フレーズ」の例をいくつか挙げてみましょう。

 あなたが・・・と感じたときに心の内側でどんなことが起きていましたか。

 その・・・の感じを話してみてもらえますか。

 ・・・が起きたそのときの状況を話してもらうことができますか。

 あなたが・・・の気分になったのはどんなことを言われたからですか。

 からだのどこで・・・を感じますか。

 ・・・を感じるというとき、内側の感覚はどんなでしょう。

 その・・・の感情を表現することはできますか。

以上の質問は話し手のリアリティにフォーカスしています。 p132

 

一番有効な「ガイド・フレーズ」は、外側のできごと、内面の感情を問わず、「深い感情」を『開く』働き」をするものです。

聴き手は「この体験のなかですでに浮かびあがっているのはどの場所か」「聞いていると、どんな側面が自然に心に入ってくるだろうか」を感じながら捉えるように努めます。 p138

 

からだの共鳴と「アチューンメント」 p156

ダニエル・スターン博士はお母さんと子供の間には自発的な「ミラーリング」(鏡のように動作が同じになる)があることを証明しました。母子の間で動きと音が螺旋を描いて大きくなり、同調した遊びを笑いながら楽しみます。

ダニエル・スターン博士はこの音と動きの同調を「アチューンメント」と名づけました。

彼は「アチューンメント」がいいコミュニケーションの身体的基礎であるといいます。十分な「アチューンメント」があれば、赤ちゃんのジェスチャーはより自由で、エネルギーに満ちたものになります。その理由は、赤ちゃんのリードにお母さんが上手に反応しながらついていくからです。ときにはお母さんがリードして、赤ちゃんがそれに合わせることもあります。「アチューンメント」があると赤ちゃんの自発的運動を担う場所が活性化し、複雑化します。つまり赤ちゃんは成長、発達していきます。それと同時にお互いの信頼関係も育ちます。必要があれば赤ちゃんはすぐにお母さんを頼ります。そしてお母さんもまた、声と顔の表情ですぐに赤ちゃんの注意を捉えることができます。相手から注意とコンタクトを要求されたとき、顔をそむけたり、硬くなる習慣はこの二人からは生まれません。

 

現在の研究からは同調(シンクロ)、「アチューンメント」、部分的なミラーリング、オウムがえし、などのジェスチャーは遺伝情報に組み込まれていることがわかっています。 p157

 

「アチューンメントが共感に役立つ」のはどうしてでしょうか。

「共感」とは話し手が、自分の内面の気持ちを聴き手が感じ取ってくれ、実際に話し手である自分と同じ立場で感じてくれると感じる特別な感覚です。共感があれば、話し手はもう悲しみ、拒絶、失望などの感情をひとりで感じる必要はありません。 p163

 

「メタコミュニケーション」は、「話の中身」ではなく、「話し方」「コミュニケーションのとり方」について話すコミュニケーションです。 p165

 

メタコミュニケーションを使ってディープ・リスニングにおける約束事を明確化すると同時に、話しの途中で予想外の問題が起きたときにもそれを使って問題を特定し、解決を探ることができるのです。 p168

 

聴き手のよろこびはどこにあるのでしょうか。それは目の前の、話し手自身です。

聴き手の満足は、話をたどり、感情を察し、話し手に「どこまでも」ついていくことから生まれます。その当てどなさに堪え、自分が耳を傾けることで話し手の「内的な真実」がひらかれることをよろこびとする人は、「ディープ・リスニング」に無限の価値を見出すでしょう。 p184

 

活発な会話の輪のなかに入れない人びとがいます。でも簡単に入れないタイプの人は、自分が「生まれながら上手な聴き手」としての能力を身につけていることを発見するかもしれませんよ。間のいい会話になかなか入っていけない人びとにとって、ディープ・リスニングに必要な辛抱、受容度、忍耐力は学びやすいものかもしれません。このような人は「活発な会話のやりとり」より、ディープ・リスニングのなかで深い満足を得ることが多いものです。 p184

 

アクションプラン:

 話し手の感情が、現時点で「問題の段階」にあるのか「解決の段階」にあるのかを見分ける