「作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いた認知症クライエントと作業療法士の意思決定の共有と協働」
タイトル:
「作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いた認知症クライエントと作業療法士の意思決定の共有と協働」
著者: 齋藤祐樹、友利幸之助、東登志夫
出典: 作業業法 32巻1号 2013年2月
まとめ:
認知症クライエントと「意味のある作業」を共有するため、ADOCを用いた。
クライエントはコーラスグループに所属し、歌を好んでいる情報はあった。しかし、重度の認知症を有するクライエントに突然歌という作業を遂行することは避けた。
そこで、視覚的に面接が行えるADOCを選択して評価を行い、歌という一つの作業を選択した。
クライエントにとって「意味のある作業」である歌を目標として共有し、介入することで、クライエントの語りの変化や家族のクライエントに対する思いの変化があった。
キーワード:
考察より p61
意味のある作業に介入する際には、どの作業を選択するか検討を行うのと同時に、「その作業にはどのような意味があるのか?」、「その作業を介してどのような人生を歩んできたのか?」などと、作業遂行の意味や文脈をクライエントと作業療法士で共有するプロセスが欠かせない。
Fisher AG: Occupational therapy intervention process model: A model for planning and implementing top-down, client-centered, and occupational-based interventions. Three Star Press, Fort Collins, 2009.
作業療法士として認知症者に接する目的は、意味のある作業ができることを通して、健康や安寧を促進すること。
認知症者が大切にしていた意味のある作業に主体的に従事し、その作業遂行の中で自己効力感を得て、安心感を自身でコントロールできるように強化していくことが、作業療法士の大きな役割。
アクションプラン:
クライエントにとっての作業遂行の意味や文脈を共有するプロセスを大切にする
重度の認知症のクライエントであっても、作業の意味や文脈を共有しようとする思いは大切だと思います。
そして、「やりたいって言ってるからからやってみる」、「好きだったからやってみよう」という安易な考えで介入するのではなく、クライエントを十分に評価し、クライエントの特性を理解した上で実践することが大事だと思います。
「3.ADOCの限界について」でも記載されているように、実現不可能な作業を目標に挙げてしまうことは、無責任な行為であり、失敗体験につながる可能性があります。
失敗から学ぶこともたくさんあるでしょう。
しかし、起こってもいい失敗、起きてはならない失敗、予測できる失敗、予測できない失敗などを見極めるためにもしっかりとした評価が必要になります。
意味のある作業を遂行する中で、そんな見極めができるのも作業療法士の専門性のひとつではないでしょうか。